自分の芝居に没頭しきらない俳優の面白さ

──今回出演するコンプソンズの金子鈴幸さんと劇団普通の石黒麻衣さんは、俳優として活動されるだけでなく、ご自身の劇団で劇作と演出を務められています。なぜ今回おふたりが出演されることになったんでしょうか。

 石黒さんはオーディションに来てくれて、めちゃくちゃ面白かったんですよ。ぼくの過去公演のテキストから抜粋して演じてもらったんですが、ほかの方々よりも頭ひとつふたつ抜けてましたし、オーディションの現場でもすごく笑いをとっていて。個性もわかりやすくてキャッチーだから、この人に出てもらえたらなにか面白いものを書けるんじゃないかと感じました。

 金子くんのことは以前からコンプソンズを観ていたので知っていて、こういう感じの人って面白いよなとずっと思ってました。後輩感を出すのがすごくうまいんだけど、同時に「こいつほんとにそんなこと思ってるのか?」と感じさせるような胡散臭さがあって(笑)。

 これまでの玉田企画でも桃尻犬の野田(慈伸)くんやテニスコートの神谷(圭介)さんに出てもらっていましたし、振り返ってみると、ぼくは演出家もやっている俳優が好きなのかもしれません。

──玉田さん自身も俳優として出演されることがありますが、演出家の顔ももつ俳優の方だと、なにか違うところがあったりするんでしょうか。

 もちろん人によるとは思うんですけど、自分の芝居だけに没頭しきらないところが面白いのかもしれません。常に片足だけ突っ込んでいるくらいの立場をとってくれるというか。それは魅力でもあり、弱点なのかもしれないですけど。たとえば玉田企画によく出演してくれる前原(瑞樹)くんは調子に乗って自分の見せ場を自分でつくりに来るようなところがあって、そこが魅力でもありますから。

──稽古のなかでは演出について議論することもあるんですか?

 あくまでも俳優として出演してもらっているので演出家として接するわけではないんですが、稽古がうまく進まないときに相談するとアイデアを出してくれることもあるので、助かることは多いですね。

2025.03.24(月)
文=石神俊大
写真=深野未季