はじめに 京都府丹後地域には、なぜ長寿者が多いのか

的場聖明

京都府丹後地域での長寿研究

 ギネスブックに記載されて久しいですが、現在ヒトの最長寿者は、フランス人女性でジャンヌ・カルマン氏(1997年8月4日没、122歳)、男性で木村次郎右衞門氏(2013年6月12日没、116歳)です。

 木村次郎右衞門氏が一生涯のほとんどを京都府京丹後市で過ごされたこと以外にも、浦島太郎伝説など、この丹後地域(与謝野町、伊根町、京丹後市、宮津市)では、長寿の話題が以前から多くありました。

 この長寿地域が、青森県の「短命県脱出」を目標に開始された弘前市「岩木健康増進プロジェクト」から注目され、弘前市岩木地区との比較研究や、丹後地域独自項目の長寿因子探索が2017年に始まりました。

 2017年の開始時点で10万人あたりのこの地域の百寿者人口が135人で、当時の全国平均50人の2・7倍でしたが、2021年現在も図1のように全国平均の2・95倍です。また、京丹後市に限って言えば、全国平均の3・24倍にもなります。

 
 

 京丹後市立弥栄病院の診療を担う各科が協力して、約2000項目のアンケートや血液・尿検査などを実施することで、その長寿の因子を検討しています。

青森県弘前市岩木町と京都府京丹後市の社会的背景の比較

 検診開始時の最初の約300名のアンケート結果から、社会的な背景と生活様式として、青森県弘前市と京都府京丹後市では左記項目の違いが認められました(図2)。

 
 

京丹後市では……
(1)個人的なことを話せる友人が多い。
(2)男性が家事にかける時間が多い。
(3)同居する人数が少ない。

 血液検査や尿検査について、現在詳しい結果の分析が続けられていますが、筋力、骨格筋量、腸内細菌、骨密度、心機能など全項目を15 年間継続して検討することで、その結果を予防医学や社会医学そして日常診療に役立てることが期待されています。

動脈硬化予防と長寿

2025.03.23(日)