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温泉でのんびり、部屋でまったり。心ととのう癒やしのひととき

 客室内の大きな石の風呂には超微細な気泡を発生させる給湯器が入っている。「肌にマジックで書いたイタズラ書きや化粧も落ちる、CMで話題の商品」のことがすぐ思い浮かぶが、入るのは初めて。微細な泡が弾けて、10分もするとミルクバスのような真っ白な濁り湯が出現した。その湯に浸かると、5分もしないうちに体がポカポカに。温泉と同じくらいに、いやそれ以上にしばらくは汗が引かないから、ウッドデッキに出て波の音を聞くのもいい。

 天橋立の海は穏やかで湖のようだけれど、海鳥が鳴き、潮の香りがするから、ここが「海の京都」だと思い出させてくれる。アメニティもタオルも最上級。地ビールや天橋立ワインのほかソフトドリンクなど、冷蔵庫に入っているものはフリードリンクだ。庭には季節に応じて椿や石楠花が咲く。海面には鴨が泳ぎ、トンビやカモメが水浴びにやってくる姿も見られるそうだ。

 温泉に入るには、北山杉の丸太が敷き詰められた廊下を通って湯殿へと向かう。凛と佇む端正な風呂に、無色透明の湯が張られていた。この地に温泉が湧いたのは平成11(1999)年。内湯の檜風呂、露天の岩風呂ともに毎日、新しいお湯に入れ替えている。

 露天風呂は建物に囲まれた坪庭のようなスペースで、周囲をぐるりと竹と竹の枝で覆い、松も含めた植栽が取り囲む。泉質は含弱放射能-ナトリウム-塩化物泉。頭上を旋回する海鳥の鳴き声と湯が滴り落ちる癒やしの音に心が和んだ。

2025.03.06(木)
文・撮影=野添ちかこ