5億年前の化石も見られる!

 高台から海に向って柑橘畑の間の坂道を下った先に、「化石窟(かせっくつ)」があります。

 ここでは5億年前の化石をはじめ、植物、海洋生物、恐竜などさまざまな時代の化石や、約4,000年前の青銅器、さらには人類初の文字が描かれた楔形文字陶盤などが展示されています。

 気の遠くなるような長い年月に秘められた、地球の歴史と生命の起源につながる手がかり。きっとそれを目の前にすれば、古代へのロマンや知的好奇心をくすぐられるはずです。

 自然と調和しながら、古きよきものと新しい感性を取り入れた総合芸術の舞台、江之浦測候所。その細部には後世に伝えるべき伝統や哲学が息づき、訪れる人に「アートの本質とは何か」立ち返るきっかけを与えてくれます。

 インスピレーションを探るため訪れた升味さんも「素材の選定から工法、建築技術まで、細部にわたる妥協なきこだわりは、自身が目指す創作活動と通ずるものがあります。また季節を変えて、訪れてみたいですね」と話します。

 多忙な日々を送るなかで鈍ってしまった感性を刺激したい人、美しいものを見て心を整えたい人も、江之浦測候所で天空を測候するという人類の原点に立ち返ることで、これからの生活や仕事のヒントを得られるかもしれません。

小田原文化財団 江之浦測候所

所在地 神奈川県小田原市江之浦362−1
https://www.odawara-af.com/ja/

升味加耀(ますみ・かよ)

1994年9月30日、東京都出身。2013年から作家・演出家として活動。15年、演劇学を学ぶためベルリン自由大学に留学。16年にベルリンにて主宰ユニット「果てとチーク」を旗揚げする。24年、『くらいところからくるばけものはあかるくてみえない』が第68回岸田國士戯曲賞最終候補作品に選ばれる。近作に『害悪』(北海道戯曲賞最終候補)、『はやくぜんぶおわってしまえ』(劇作家協会新人戯曲賞最終候補)などがある。

2025.02.18(火)
文=平野美紀子
写真=宇壽山貴久子
ヘアメイク=宮本佳和
スタイリスト=渡邊 薫