![東京・六本木ヒルズ森タワー52階の「森アーツセンターギャラリー」にて開催中の展覧会「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/1/1280wm/img_61241083bac22fd07317bb0c9616e6322613133.jpg)
東京・六本木ヒルズ森タワー52階の「森アーツセンターギャラリー」にて、2025年4月6日(日)まで「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」が開催されています。
今回の展覧会では、有数の古代エジプトコレクションで知られるニューヨーク「ブルックリン博物館」から、約150点が集結。古代エジプトと聞くと、ファラオ(王)や、そのお墓であるピラミッド、埋葬されたミイラや装飾品などを思い浮かべますが、今回の展覧会ではこれまであまり伝えられてこなかった人々の暮らしの様子にも注目。最新技術を使ったピラミッドの研究成果も交え、古代エジプトの謎を掘り起こします。
エジプト全土で発掘された遺物をもとに、古代エジプト全時代の歴史を紐解く
![名古屋大学 デジタル人文社会科学研究推進センター教授・河江肖剰(かわえ・ゆきのり)さん。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/c/4/1280wm/img_c4fd4df8ac3a3c19286f652f462703e53817822.jpg)
この展覧会を監修したのは、エジプト考古学者で名古屋大学 デジタル人文社会科学研究推進センター教授・河江肖剰(かわえ・ゆきのり)さん。
展示作品を所蔵するニューヨーク市ブルックリン区にある「ブルックリン博物館」は、1895年に開館したアメリカ国内でも長い歴史を持つ博物館のひとつ。アメリカ最大の古代エジプト美術コレクションは1,200点を超える作品を有し、世界的にも注目を集めています。
今回はそんな貴重なコレクションのなかから、彫刻や棺、装飾品、ミイラなど約150点が六本木に集結。なかには長く調査、研究に関わってきた河江さんもなかなかお目にかかることがないという珍しい作品もあるといいます。さっそく、古代エジプトの世界へご案内しましょう。
古代エジプト人も安産のお守りを身に着けていた!?
![《貴族の男性のレリーフ》前1292~前1075年頃 ※東京展のみ出展](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/1/d/1280wm/img_1d7f6faa66e8bfa87d24d79ffbeb2ca02976669.jpg)
1st Stage「古代エジプト人の謎を解け!」で焦点を当てているのは、これまで紹介される機会が少なかった古代エジプト人の日常生活。狩りをする男性や、調理場の光景を描いたレリーフなど、さまざまな作品を通して当時の人々の暮らしを垣間見ることができます。
古代エジプトでは知識と読み書きの能力が高く評価されており、親が子どもに就かせたい職業のナンバー1は「書記」でした。当時の書記は、神の言葉である文字を操る役職で、神官や官僚も「書記」にあたるそう。
会場には、書記のレリーフや像をはじめ、当時の書記官が実際に使っていたパレット、葦ペンなども展示されています。
東京会場限定で展示される《貴族の男性のレリーフ》も見どころのひとつ。切れ長の目元、スッと通った鼻筋が印象的な男性が描かれていますが、名前やその背景などは不明。身に着けている高貴な衣装や、複雑な巻髪とロータス(ハス)の花で作られたかつらから、当時のエリート層であることがわかるそう。
![写真左が文中に登場する《ベス神の顔を象った壺》前522~前332年 展示風景](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/3/1280wm/img_733518feb9d7ba084c9d1c0105148ad12333010.jpg)
どこか愛嬌のある表情でこちらを睨みつける《ベス神の顔をかたどった壺》。モチーフになっている「ベス神」は家族を守る守護神で、出産や幼い子どもを守ると考えられていたそう。河江さんは「中にはミルクや液状の薬が入っていたのかもしれない」と考察しています。
![《出産の神タウェレトの護符》前1539~前1479年頃](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/0/2/1280wm/img_02440eb11b403783be535b71fb1255b91975388.jpg)
![《カエルの護符》前1390~前1353年頃](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/6/1280wm/img_66436a546fdcbd89b06aba47022a992f1888507.jpg)
現代のように医療が発達していなかった古代エジプトの女性や乳幼児にとって、妊娠や出産は危険を伴うものでした。そのため、人々は護符を身に着け、守り神の像を祀り、生まれてくる子どもの無事を祈願しました。
このほかにも《授乳をする女性の像》や、《出産の神タウェレトの護符》など、子育てや安産のお守りを思わせる作品も。我が子を想う気持ちは、3,000年前も現代も変わらないことに、親近感を覚える人も多いのではないでしょうか。
2025.02.11(火)
文=河西みのり
撮影=深野未季