#317 Marquesas Islands
マルケサス諸島(フランス領ポリネシア)
フランス領ポリネシアのマルケサス諸島のひとつ、ヒバオア島について、前回はこの島に魅せられた欧州のアーティスト、画家ゴーギャンや歌手ブレルを紹介しました。今回は2024年に世界複合遺産に登録された理由である、自然や文化について触れていきましょう。
太平洋に孤立して浮かぶマルケサス諸島。寒流が流れる海から1000メートル級の山まで様々な環境が揃い、海に陸に、独自の進化を遂げた固有種が多く生息しています。
また、孤立した島々に海を渡ってやってきた人々は、独自の文化を発展させました。数百を数える古代遺跡を残し、そして歌やダンスなどを今に伝えています。一説によると、守り神の「ティキ像」の彫り方など、マルケサス諸島はフランス領ポリネシアのアートの起源だという声も。
そんなヒバオア島の深部や海岸線を地元ガイドと共に4WDで走行する1日ツアーに参加しました。島を探検しながら、自然や文化について話を聞き、興味を掘り下げていく内容です。
コースは中心地のアツオナの村からギザギザと尖った山並みを走り抜けて、北へ。そして入り江が連続する海岸線を東へ、総走行距離約は約95キロ。そんなに走っても、島を一周したわけではなく、さすがフランス領ポリネシアで3番目に大きな島です。
中心地から離れると、赤土を露出した未舗装の道路が多く、ガードレールのない断崖ぎりぎりの道でも4WDは疾走していきます。時に野生のヤギの集団が道をふさぎ、そんな時は彼らが通り過ぎるまでひたすら待つことも。
入り江では少し墨が混じったような深い青の波が連続して岸に打ち寄せ、波乗りや魚突きをする地元の人を見かけます。小さな村を通過すると、教会の入り口に座って女性たちが世間話を交わしていたり、時折茶色のニワトリが道路に飛び出してきたり。
粗削りな自然とのんびりとした素朴な南洋の暮らしが、車窓の向こうに広がります。
2025.01.25(土)
文・撮影=古関千恵子