ファッション界のレジェンドたちと作り上げた演出

――2022年と2024年に井上さんが手がけられた「BALLET The New Classic」というバレエ公演はチケットが完売するほど大好評でした。どんな手応えを感じていらっしゃいますか?

 「BALLET TheNewClassic」では、昔の私のようにバレエにまだ関心がない人たちに“バレエダンサーはかっこいい”ということをお伝えしたいと思い、ファッション界のレジェンドクリエイターの皆様に衣裳、ヘア&メイク、演出で入っていただきました。

 また、私と同じ思いで一緒にこの公演を手がけているK-BALLET TOKYOプリンシパルの堀内將平さんが生み出す作品とその構成は、バレエファンの方々に驚きと感動と賛否両論を巻き起こしています。

 そして私たちが魅了されてやまない世界で活躍するスーパーダンサー達の踊りと表現はお客様を圧倒しました。

 皆さんのお力をお借りして総合力で創り上げたバレエ公演のロビーは、他のバレエ公演では目にすることができない“ざわめき”と“興奮”が溢れるもので、とても嬉しく手応えを感じました。今回の『EOL』はこの経験をもとに、新たな公演として企画しました。

――『EOL』では衣裳制作をする上で、肌触りや動きやすさを意識した素材選びをしたそうですが、どんな衣裳づくりを目指していらっしゃいますか?

 出演者のシルヴィア・アッツォーニさんとのオンラインミーティングで、「自分たちが敬愛する日本の文化とコラボレーションしたい」というお考えを伺いました。日本の文化といっても“侘び寂び”ではなく、まさに今という時代を生み出している日本のクリエイターに参加していただきたいと思いました。

 そこで、現代を生きる人々の道具としての衣服という視点で東京から世界に向けて発信している「CFCL」にご一緒してもらえないかと相談しました。

 クリエイティブディレクターの高橋さんは以前よりバレエに関心が高く、バレエダンサーをモデルとして起用するプロジェクト“Pas de CFCL”で私は撮影を担当させていただきました。

 先日最初のフィッティングをしましたが、一緒に対話をしながら試行錯誤をさせていただけるので、とても楽しく、そして心強いです。リアルクローズだと踊れない部分もありますので、踊るための衣裳をこれから創り上げていきます。

 CFCLのファンの方にも素晴らしいダンサーをご覧いただける機会になるので、お客様の裾野を広げていただけるという意味でも、ご一緒できてとても嬉しいです。

2025.02.10(月)
文=山下シオン
写真=佐藤 亘