バレエダンサーから受けた感動を届けたい

――「バレエ界の常識を変えたい」と過去のインタビューでもおっしゃっていますが、現在のバレエ界にはどんな課題があって、何を変えたいとお考えですか?

 バレエは歌舞伎と同じく、400年ほどの歴史があり、何百年という長い時間の洗礼を受けてもなお残り続けているクラシックバレエの芸術性に心から魅了されます。

 それと同時に、現在のクラシックバレエの形が出来上がったと言われる250年ほど前は、照明も薄暗く、その光の中でどうすればダンサーが映えるのかを考え、衣裳にビジューをつけてキラキラさせていたり、バレエメイクと言われる独特のメイクが形作られたりしてきたのではないかと思うのです。

 現在はとても技術が進化し、照明は明るくなり、今を生きるアーティストたちは、より良い未来や環境のことも考えていて、洋服の素材を選ぶ際の視点も違います。つまり、250年前と今とでは、クリエイションにおける美意識や思想が違っていると思うんですね。

 私自身は、バレエ界の常識を変えたいというより、かつてのアーティスト達がバレエ作品を創り上げてきたように“現代を生きるアーティスト達が彼らの思想と感性を取り入れた作品に関わると、バレエはどう進化するのだろう”ということに興味があります。

 また、今の主なバレエの舞台ですと、踊っているダンサーを正面からのピンスポットの照明で追いかけていたり、背景に奥行きがなかったりで、舞台全体がフラットな印象なのですが、それを拝見していると、私だったらこうするなというアイデアが浮かんできます。

 写真家なので“光”が気になるのだと思いますが、ダンサー達の美しさをもっと光で表現できると思うので、照明にはこだわっています。バレエとバレエダンサーの魅力を届けるための表現の余地が、まだまだあるように感じているんです。

 なので、私がバレエダンサーから受けた感動を私の方法で伝えるべく、お客様にプレゼンテーションしている感じかもしれないですね。

2025.02.10(月)
文=山下シオン
写真=佐藤 亘