徳久さんは後免町の住民らで結成した「ハガキでごめんなさい実行委員会」(西村太利委員長)の副委員長だ。生前のやなせさんとは、南国市で最も親しく交流し、コンクールも中心になって運営してきた。
「年賀状じまい」も近年の流行に
ただ、徳久さんは「値上げだけでは説明がつきません」と語る。
ハガキは7月から募集し始めたので、9月までに送れば値上げ前の料金で済んだ。値上げが本格的にダメージを及ぼすのは来年度からと見ており、「もっと厳しくなると予想しています」と唇を噛む。
では、何が影響したのか。徳久さん、安岡事務局長、担当の竹中さんの話を聞いていくと、様々な要因が見えてきた。
まず、第一にハガキ離れ。
このところ、郵便料金の値上げを契機にした「年賀状じまい」が話題になっている。
徳久さんの本業はクリーニング会社の会長だが、「『もう年賀状を止めます』というハガキが秋口から届き始め、仕事関係ではほとんどの会社が今年で年賀状を止めてしまいました」と話す。
経費削減の面もあるだろうが、「年賀状じまい」は近年の流行になっている。今冬は社会面のトップ記事で報じる地方紙もあり、こうして社会現象化してしまうと、流れは止められない。
安岡事務局長は「最近では余った年賀状で応募する人も見なくなりました」と話す。
「唯一出すハガキが年賀状だった」という人も多かっただろうに、このままではハガキが滅びてしまいかねない事態だ。
30代の竹中さんは「郵便の出し方さえ知りませんでした」
そもそも年賀状を出していなかった世代もある。30代になったばかりの竹中さんはそうだ。
「年始の挨拶は、グループLINEに『明けおめ』で終わりです。実は南国市観光協会に入るまで、郵便の出し方さえ知りませんでした」と告白する。
竹中さんが初めてハガキを目にしたのは祖母の家だ。
「幼い頃に棚をあさっていて発見しました。『これは何だろう』。未知との遭遇みたいな感じで、慌てて扉を閉めました」。その後もハガキや手紙に触れることはほとんどなかった。
就職してからは業務上必要なレターパックなどを利用するようになったが、「メールだとすぐ届くのに、なぜ何日も掛かる郵便を出すのか、しかもわざわざお金を払うのです。最初は不思議でした」と語る。
安岡事務局長は「竹中さんのような世代が増えたら、ハガキなんていつなくなってもおかしくありません。このスピード化時代に集配回数が減って利便性が低下していますし」と話す。同じ「三公社五現業」と呼ばれたかつての政府公営企業で、JRの地方路線が減便と利用者減という悪循環に陥っているのに似ている。
2025.01.01(水)
文=葉上 太郎