④ふわふわした愛しさの表現――猫愛る(もふる)

「猫愛る(もふる)」は、「ぽたぁじゅ」さんからのご応募です。

「もふる」という動詞での応募は多数あり、この言葉がすでに一般用語として定着していることを実感しました。では、どの漢字を当てるのか。「触る」というシンプルな動詞よりも、「もふもふもふ~」と触らずにはいられない衝動、対象への愛情がより強く表現されているのは「愛する」という言葉だと感じました。「猫」と限定していいのかという議論もありましたが、「もふる」という言葉がより一般的になれば、「犬愛る」「兎愛る」など、動物の種類ごとに漢字を当てはめるのも面白いかもしれません。

⑤夏の終わりを告げる鳴き声――蝉終る(セミファイナル)

「蝉終る(セミファイナル)」は、「かたこと」さんからの応募作品です。

実は「セミファイナル」という読みの応募は複数ありました。その中で、短い人生(蝉生)の終わりを表現しているという点で、最終的に「蝉終る」という漢字の組み合わせに最も感じ入りました。夏の終わりに地面に落ちてきたセミが、力尽きる直前に最後の力を振り絞って鳴き声を上げる切なさ、そして物語のクライマックスへと繋がる緊張感を最もよく表現していると思い、選出させていただきました。

⑥句点1つでクスリと笑える――威圧る。(マルハラる)

「ペコポン星人」さんから応募いただいたのは「威圧る。(マルハラる)」。

 まず「マルハラ」という言葉を知らないおじさん編集部員もいましたが、若い編集部員にその意味を教えてもらい、「なるほど!」と納得。メッセージで句点を使うことで威圧感を与えてしまう「マルハラスメント」のことだそうで、現代社会ならではのコミュニケーションの難しさが表現されています。そして、漢字や言葉に強さがありながらも、タイトルの最後にしっかり「。」を付けているユーモアセンスに、思わず笑わせていただきました。

2024.12.23(月)
文=「文春文庫」編集部