②良心と復讐心の狭間で――私刑く(さばく)
「私刑く(さばく)」という、重みのあるタイトルを提案してくださったのは「UR-Z」さん。
法で裁くのではなく、私的に制裁を加える「私刑」という言葉は、法律的にも倫理的にも許される行為ではありません。しかし、被害者感情と深く結びついている言葉であるのも事実です。「人は人を裁くことはできない、だが…」と良心と復讐心の間で葛藤する人物は、ミステリー小説にしばしば登場します。このタイトルは、そういった人間の心の闇を鋭く抉り出しているように感じます。
③思考の遅効性に心掴まれる――青林檎夫人る(みせすぐりーんあっぷる)
「青林檎夫人る(みせすぐりーんあっぷる)」という、一風変わったタイトルを考案してくださったのは「ぴろぴろ」さん。
「あおりんごふじん」という日本語の語感から受ける印象と、アーティストの「Mrs. GREEN APPLE」という英語表記から受ける印象が全く異なる点が非常に面白いと感じました。パッと見ただけでは意味不明なタイトルですが、少し考えると「ああ、なるほど!」と腑に落ちる…この思考の遅効性に心を掴まれました。「Mrs.」を「夫人」と訳している点もセンス抜群です。
2024.12.23(月)
文=「文春文庫」編集部