70年もの間、一線で活躍し続けた尽きない想像力と情熱
量産することに対しても、“多くの人に手に取ってもらえる”というポジティブな考え方を持っていて、まったく抵抗がないことに逆に驚かされました」と話すのは、当時営業を担当していたトンカチの勝木悠香理さん。
設立60年の歴史をもつフィギュア制作会社の海洋堂とカプセルトイをつくった際も、「このフィギュアをつくった人は天才ね」と絶賛し、職人たちへのリスペクトを惜しまなかったそう。さかのぼれば、グスタフスベリ製陶工場に在籍していた時代に、量産を前提とした作品も数多く手がけていたリサ。それでも表現者としてのプライドと情熱を失わず、オリジナリティにあふれた作品を多く生み出してきたのは、彼女の才能にほかならない。
「たとえ量産でも作家性を失わないリサのすごさは、特に3Dの作品をつくるときに実感しました。どの作品も、もともとのデザインを使い回すことはせず、マイキーもキーホルダーや箸置きなど、つくるものに合わせて表情やデザインを変えていました。ビンテージ作品を復刻する際も、同じものをそのまま出すのはつまらないと言って、なにかしらアレンジをしてくれて。今思えば、古くからリサの作品を集めていたコレクターへの配慮もあったのかも知れません」(佐々木さん)
北欧を代表する陶芸家として輝かしい実績を残し、公の場では「私の作品は1000年残るわ」と雄弁に語ることもあったというリサ。その反面、ものづくりに対する姿勢は至って謙虚で、焼き上がった作品を窯から取り出す時はいつも、「今度こそ、きっと傑作を!」と念じていたという。
「リサは作家としてのプライドはありましたが、決して偉ぶらず、どちらかというと控えめな人でした。リサの家に行くといつも小さな作品をくれるのですが、渡すときも”気に入ってくれるかしら”という謙虚な感じで、その人に合うものを真剣に選んでくれているのも伝わってきました。
2024.11.30(土)
文=田辺千菊(Choki!)
撮影=深野未季、平松市聖(3ページ目2枚目)
提供写真=トンカチ