谷山 そうですね。

 堂場 それだと小説が読みにくくなるので、どうしようかと思ったけど、結局僕はいつもどおり、文章としての会話として書きました。

 

 堂場 登場人物ひとりひとり演じ分けるのは大変だったでしょう。

 谷山 今回はナレーターとしてすべてを任せてもらったので、まずストーリーテラーとして演じて。そして僕は声優ですから、セリフの部分は体温の通ったキャラクター分けみたいなことを比較的色濃くやりました。

 でも、そこまでやらなくてもいい朗読というのもあるのかもしれないとも考えましたね。つまり、ここはセリフですよ、ということがわかればいいだけで、男女を演じ分けたりしなくてもいいのでは、と。でも僕は今回このような表現方法になったという次第です。

 堂場 僕の中で二階堂のキャラクターが定まらないまま、谷山さんにぶん投げちゃったという、誠に申し訳ない状況だったんですけど、結果的にはすごくいいイメージを作り上げていただいたなと。声の高さとか、まさにこういう感じなんだって僕は途中で聞いて確信しましたので、安心してこの人が二階堂ですというのを楽しんでいただけるんじゃないでしょうか。

 谷山 声優冥利につきます。ありがとうございます。

 物語が全部二階堂という男の一人称で書かれているので、二階堂が話を引っ張っていく形です。二階堂の心象はもちろん、他のキャラクターも二階堂の目を通して描かれているので、朗読していると、二階堂の中に自分がいるような感覚――僕は“二階堂のぬるま湯”と呼んでますが――に浸かっていたような感じがしました。でもそれは初めて体験する面白さでした。

 セリフを、各キャラクターそれなりに味付けを変えて演じてみました、というのが今回の聴きどころのひとつで、聴いてみていただけたら面白がっていただけると思うし、あとさっき言った“二階堂のぬるま湯”の没入感というか、二階堂以外のキャラクターのセリフをのぞく、物語すべてが二階堂という何か不思議な感覚が、このオーディオブックのもうひとつの聴きどころかと思います。

2024.09.22(日)
文=堂場 瞬一,谷山 紀章