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主人公がふわっとしたセレブ刑事になったわけ
谷山 朗読し終えて、これはまだまだ続いていくシリーズの、あくまで第一歩だなと思いました。登場人物が多いし、主人公の二階堂悠真と、彼が今後ビジネスパートナーにしたいと目論んでいる警務課の和久井友香が話の中心になるんでしょうけど、全編読み終わった僕自身も、二階堂のキャラクターがまだつかみきれていなくて。これから堂場さんの筆で整って、定まっていくのかな、と。
堂場 谷山さんに読まれちゃってるな。実は二階堂のキャラクターはあまり定めてないです。
谷山 やはり! 308ページあったのに、二階堂にふわっとした印象があって。
堂場 昔は結構ガチガチにキャラクターを固めて、シリーズ1発目から強烈にこの人はこういうキャラって出してたんですけど、最近はあんまり気にしないで、物語がするっとふわふわ変わっていく、みたいな感じにすることが多いですね。
昔はね、刑事は「信念の人」じゃないと駄目だと思って書いてたんですよ。でもそんな人間はあんまりいなくて、みんなふわふわ生きてるんですよね。刑事だって壁にぶつかって、修正して、あっち行って、また変わる。二階堂風にいえば、「人間ってそんなものじゃないですか」と。
谷山 現代にこの主人公像というのは共感しやすいかもしれません。セレブ担当刑事って新しいけど、意外とふわっとしてるんだとか、女性に対して意外とうまくいかないもんなんだなとかね。「信念の人」じゃないのが一つのポイントかもしれないですよね。
谷山さんの声でキャラクターの解像度が上がる
堂場 この間収録を聞かせていただいたときに、谷山さんが二階堂をわりあい高い声で演じてるなと思って「そうだそうだ、こいつこういう声だ」と納得したんです。人に演じてもらって初めて、「ああ、こういう人だったんだな」って。今後は谷山さんの声のイメージで進むと思います。
谷山 それはナレーター冥利に尽きますね。
2024.09.22(日)
文=堂場 瞬一,谷山 紀章