太田 いやあ……。
コムアイ 正直、今は考えてないです。あと学校に入ったりしたら、いろいろバレて「アマゾンで産まれた子でしょ」って噂されてしまうだろうし。だから、私の知名度が低いところで育てたほうがいいのかなって。
太田 そんなことでいじめとかが発生する構造自体、他の国にはないと思う。もちろん場所によるけど、日本ほど違いをあげつらうことはない。
だって、母親がカメルーン人で父親がインド人で、国籍はフランスで、育ったのはアンティル諸島っていう「どんだけ大陸を移動してるの?」みたいな人が、世界にはわんさかいるんですよ。
コムアイ だから、多様なことが当たり前の場所で子育てするのが希望です。どうやって学費を稼ぐかはまだ何も考えてないですけど(笑)。
当然?奇跡?…出会うべくして出会ったふたり
ーー言い方が難しいですが、これまでの話を聞いていると、コムアイさんと太田さんは日本においてはアウトサイドな位置にいますよね。それを考えると、おふたりがめぐり逢ったのって当然だとも奇跡的だとも思います。
太田 あえて言うと、僕みたいな安定しない職業で、長髪、ひげで、海外を転々としちゃうような男性って、いわゆる結婚市場みたいな場所では非常に点数は低いんですよ(笑)。恋愛関係としてはいいけど、出産、子育てとなると、「考えられない」みたいな。
自分のそういう立ち位置は自覚していたので、自分としては付き合っている人に「家族を持ちたい」的なことを言えるわけないと思っていたし、言わないようにしてたんですよ。でも、どこかに自分と同じような発想を持っていて、海外を転々とすることが好きで、安定にこだわらない女性がいたら一緒になればいいのかなという。そんな望みの薄い期待はあったけど、日本人とは無理かなって。
コムアイ そうしたら、日本にいました(笑)。
太田 そう、「いたやん」ってなって(笑)。
コムアイ 日本の固い考えからすると、できてないことが私たちにはいっぱいあるんですけど、「それがお互いに心地よかった」みたいに感じられる関係ですね。
写真=橋本篤/文藝春秋
2024.09.13(金)
文=平田 裕介