東京では、人が人にやさしくできる余裕がなくて、傷付いている

ーーいまはブラジルにお住まいですけど、日本での子育てをしてみて大変だと感じることはありましたか。

コムアイ 児童手当とか医療費無料とか、お金のサポートは充実してきてるなと感じるけど、都心で暮らすと文化的にちょっとみたいなことはありますね。

太田 よく炎上するじゃないですか。「ベビーカーを押してたのに、エレベーターで誰も通してくれなかった」なんて投稿したら、逆に「調子に乗るな」とバッシングされたり。

コムアイ 「子持ち様」っていうのがトレンドに入ってて「怖っ」と思った。障がい者の人たちに対しても本当にひどい。

太田 「優先するな」っていうね。少子化で、子供の泣き声とか聞く機会もないし、子供がふざけるのを目にすることも少なくなって、子供に対して耐性のない社会だなというのは常々思います。

コムアイ 東京は、特にそれを感じる。人にやさしくできる余裕がなくて、傷付いているんだと。私もそういう時期あったし。

ーー子供も萎縮してしまいそうですよね。

太田 日本社会って、すごく強力だけど外の世界では通用しない倫理観がいっぱいあるじゃないですか。儀礼が細かくルール化されていて、圧もあるから、そこからはみ出すのが怖くなっちゃう。僕はそれが嫌で、自由に生きられる人間になりたいから、いろんな国に住んで、何言語も身につけて現地に溶け込みながら、いろんな倫理観を取り込んできたんです。

 アマゾンでは素っ裸の子供がギャーギャー走り回っていても「別にいいじゃん」って感じで。かといって、「表参道で立ちションしてもいいよ」と子供に言えるかと言ったらまた別の問題ですけど(笑)。僕らの子供は、どこの国に行っても特定の倫理観に押しつぶされないような力強さが備わってくれればなって。

 

コムアイ 周りを気にし過ぎるのは、ちょっとね。

太田 日本にずっと住んでたら、そうなっちゃうとは思うよ。

多様なことが当たり前の場所で子育てをしたい

ーーいずれは、日本で子育てを。

2024.09.13(金)
文=平田 裕介