たとえば、いま家の外に出て車に轢かれて死んでも、「まぁ、いいか」と思える人生を送りたいんです。動き続けている現実の中で、自分は自分にきちんと向き合えているのか自問自答しながら生きていたい。それが僕が生きている実感が得られるためのひとつの基盤で、結婚することでそこに妥協が生まれてしまう気がするんですよ。
縛られる気がすると訊ねられましたけど、そこに関して言うと、妻、夫という言霊の力がすごく強い。「夫として、より一層責任感を持って」みたいなことを言ったり、言われたりするじゃないですか。
ーー「らしさ」みたいな。
太田 そうです。僕は「夫として僕は」的なことはコムちゃんに言わないですし、コムちゃんにも「私はあなたの妻だから」とかあまり言ってほしくない。夫、妻というワードに蓄積された歴史みたいなものを自分の中に入れないことで、僕は自分の身体だけでいられる。そういう状態でも、子供のこともコムちゃんのことも大事に思ってるし。
ーーそうした関係のお2人が子供を持ったわけですが、お子さんの姓はどのように。
コムアイ 日本では、母親か父親のどっちかにするしかないですね。ペーパー離婚の場合は父親の姓を子供に付けることもできるけど、私たちみたいに籍を入れてない場合だと自動的に母親の姓になっちゃいます。
太田 僕は輿の名字がカッコいいと思っていて(笑)。
コムアイ たしかにカッコいいよね。でも電話で予約するときはいつも聞き返されるから、面倒くさいよ(笑)。
コムアイ 光海君のご両親は事実婚だから、兄妹で名字が違うんです。
太田 そうなんです。ひとりずつ、親の名字を継いでいるので。そのせいで嫌な思いをしたことは子供時代から一度もないし、家族の繋がりにとってネガティブな影響があったこともないです。強いて言えば、携帯の「家族割」とかを申請するときに若干めんどくさかったとかくらい。
一緒にいる相手は恋をしてる相手
ーーお互いをパートナーみたいに捉えているところは?
2024.09.13(金)
文=平田 裕介