また、説明可能にするということは、構造を整理して把握して、脳のメモリに乗せる必要がある。
先に、「どうしたらそんなに細かいところまで把握できるのか?」という私の疑問に対し、スキップマネージャのアニルーダが「メンタルモデルをつくる」ことだと示唆してくれたエピソードを紹介したが、まさにメンタルモデルを使った構造的な把握こそがそのまま記憶にも直結する。
逆にいえば、メンタルモデルを脳内に作成するためには、単にやって終わりではなく、細かいところまで自分で「ハンドル」できるレベルまで理解して、整理する必要がある。つまりレベル1の領域だ。そのためには単に「できた」ではなく、少なくとも「説明可能か?」というセルフチェックを入れたほうがよい。
「ブログを書く」すすめ
人に説明可能な状態にもっていく訓練として最良の手段の一つは、ブログを書いてみることだ。
私のプログラミング師匠かずきさんにプログラミングの上達のコツを聞いたときに言っていたことが、「新しい技術を学んだら、ブログを書く。サンプルコードはそのまま使うのではなく、自分なりに変えたものをつくる」。つまり、人に説明可能なレベルで記述することが理解を深め、記憶を定着させるのに非常に有効な手段なのだ。私がよくnote やブログに雑記を書いているのも、自分の気づきを脳内整理して記憶するためにやっている側面が強い。
人間が記憶をするために有効な方法は、シンプルに「思い出そうと頑張る」ことだ。私はこの方面への苦手意識が強かったが、これを理解してから記憶力が大きく改善された。
例えば歌の歌詞を覚えようとする。今までは、何回も通しで繰り返し書いたり、何回も歌を聴いたりしても一向に覚えることができなかった。
そこで、何回か歌を聞いたら、最初から少しずつ歌詞を思い出すようにしてみた。最初の小節を思い出す、それができたら次も記憶から呼び覚まそうとする。全部いっきにやらずに、少しずつ「思い出す」ようにする。すると以前は全然覚えられなかったのに、今は1日あれば歌詞が暗記できるようになったのだ。
2024.09.07(土)
著者=牛尾 剛