最強の「コーネルメソッド」ノート術

 さらにこの理論を応用したノートの書き方がある。「コーネルメソッド」という比較的有名な方法だが、「ノート/キュー/サマリー」の形式で作業を記録し、その日の終わりに整理し、「作業内容を人にそらで説明できるかどうか」を記憶できたかのチェックポイントにしている。例えばコンピュータの新しい操作方法を覚えたとする。ただノートに書きとめるだけではなく、アウトプットを意識したコーネルメソッドの方法で書くのがおすすめだ(図参照)。

1 「ノート」のエリアには、ノートを取りながら学ぶのではなく、自分が学んだことを後から思い出しながら要点を書くのがポイント。例えばオンライン会議でウィンドウズの画面が映らなくて苦労して、いろいろ調べて解決したとき、そのプロセスを思い出して整理して書く。箇条書きでもいいし、簡単な図を入れてもいい。

2 「キュー」(きっかけ)には、自分が学んだことにつながる質問を書いておく。例えばウィンドウズで画面がうまく映らない場合に、できることは何か? など。

3 「サマリー」には、後日振り返ったときに、要約を書く。この場合なら、トラブルの原因と解決法の簡潔なまとめだ。

 

復習のタイミングを習慣化する

 3つに区分けして書く。たったそれだけのことが、仕事においてかなり有効だ。最初からアウトプットを意識したこの記述の仕方だと、理解のレベルが自然と深くなり、驚くほど記憶の定着率が高まる。

 記憶に関するもう一つの重要な要素は、記憶しやすくなる復習のタイミングを習慣化するという点だ。覚えたら翌日、そして1週間後に振り返るとよいだろう。

 有名な「エビングハウスの忘却曲線」を踏まえてもそのほうが合理的だし、カナダのウォータールー大学の、24 時間以内に10 分間復習すれば記憶は100%戻るという研究発表もある。

 コーネルメソッドのメリットは、復習で思い出す練習もしやすいことだ。私はこの方法でノートを書く癖をつけて、次の日に見直して、覚えているか確認するようにした結果、仕事の記憶の解像度がくっきりと上がってきたのを実感している。

 自分の作業をいつでも明確にわかりやすく人に説明するスキルは、非常に重要だ。自分の知っているコードベースというものは全体の一部なので、どうしても人に引き継いだり、エキスパートにものを尋ねる場面がよく発生する。日頃から伝達を意識した記録のつけ方をしていると、多くの時間が節約できるのは言うまでもない。

世界一流エンジニアの思考法

定価 1,760円(税込)
文藝春秋
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)

2024.09.07(土)
著者=牛尾 剛