この記事の連載

 世界最高峰のドリームチーム、米マイクロソフト社・シニアソフトウェアエンジニアの牛尾剛さん。44歳で米マイクロソフトに転職し、5年前からアメリカでAzure Functionsというクラウドサービスのエンジニアとして働いている。牛尾さんの著書である、世界一流のエンジニアたちの「思考法(マインドセット)」を綴った『世界一流エンジニアの思考法』も話題だ。牛尾さんが働く世界一流のグローバル企業にも、ジェンダー不平等はあるのか。「世界一」の職場での働き方を聞いた。


──日本はOECD加盟38カ国のなかで高等教育機関における自然科学・数学・統計学分野の卒業・修了生に占める女性の割合が最低という、世界的に理系女子が少ない国ですが、アメリカでは女性エンジニアが多く活躍しているのですか?

 日本に比べたら圧倒的に多いと思います。その人が優秀か否かという差はあっても、「女性」「男性」という区別はありません。

 女性エンジニアのなかには「もうちょっと女性が多くいたらいいな」と言っている人もいますが、人口の半分は女性ですし、プログラムを組むのに性差があるわけではないので、性別で雇用の機会を奪うなんて、会社にとっても大きな損失だと思います。

──昨年、男女の賃金格差を研究されていたクラウディア・ゴールディンさんがノーベル経済学賞を受賞されたことで、労働市場のジェンダー不平等は日本特有の問題ではないのだと気づいた人も多かったと思います。アメリカでも「ガラスの天井(グラスシーリング)」を感じることはありますか?

 少なくともマイクロソフトでは「あの人には敵わない」と思うことはあっても、「男性だから優秀」「女性だからできない」という考え方は一切ありません。

 実際、プリンシパルエンジニアのグレナはひときわ優秀なエンジニアとしてみんなから一目置かれている若手の女性です。また、僕のマネージャーのプラグナーも抜きん出て優秀な女性です。プラグナーは10人くらいのチームメンバーの状況を完璧に理解し、常にみんなが快適に働ける場をつくってくれる敏腕マネージャーですが、指示ではなく、それぞれが自分で考えてできるように手助けをしてくれるので、チームメンバーの個々の能力向上にも大きく貢献しています。

 僕は男性なので、日本にいたときは同僚の女性がグラスシーリングで苦しんでいるのを見て、そういうのがあるんだなと頭で理解するくらいでしたが、アメリカに来てはじめて、日本がいかにジェンダー不平等な社会だったかを実感しています。

2024.01.19(金)
文=相澤洋美
撮影=三宅史郎