この記事の連載

 2024年7月に出版された『映画とポスターのお話』(白泉社)は、アリ・アスター監督の『ミッドサマー』や宮﨑駿監督の『風の谷のナウシカ』といった映画作品をテーマに、画家・ヒグチユウコさんとアートディレクター大島依提亜さんの対談と、手がけたオルタナティブポスター40点余りが収録された、美しい画集のような映画対談集です。

 映画好きにはたまらない一冊となった今作。オルタナティブポスターを描いたきっかけや、映画作品が自身の制作に与えた影響について、ヒグチさんにメールインタビューでうかがいました。

オルタナティブポスター制作のコンセプト

――オルタナティブポスターとは、映画作品をテーマにアーティストがリデザインしたアートポスターのことで海外を中心に話題ですが、ヒグチさんがこれまでに観た作品で印象的だったものはありますか?

ヒグチ どの方が描いたかちょっと記憶にないのですが、画像で「かっこいい!」と思った作品は多々あります。大体海外のものが多いですね。

「オルタナティブポスター」という名前は、大島さんと一緒にポスターをいくつも作っている時に、自然とそう呼ぶようになったような気がします。

――絵本をはじめとするご自身の作品については、「観た人が自由に感じてくれれば」とお話しされています。自身の作品作りとポスター制作ではどのような違いがありますか?

ヒグチ 絵本や自分の作品に関してはおっしゃったように、観た方の判断だと思っています。しかし、映画のポスターとなると多少自分の解釈が入っていることもありますが、元になる作品が別にあるので、あくまでもその映画を宣伝したいと言う気持ちで描いています。

 ですから、「絵を見ただけで、すべて内容がわかってしまうようなことは避ける」。または、「できるだけ内容を勘違いされないように描く」というのは意識しています。

気に入っているポスターは『めまい』

――今回収録されたオルタナティブポスターで、一番気に入っている作品はどれですか? 

ヒグチ 『めまい』です。六本木にある森アーツセンターギャラリーで展覧会を行った際、その時点で完成していたオルタナティブポスターをすべて印刷し直して展示したのですが、「1点だけ、とても大きいサイズにしよう」と提案したんです。その際、私は上記の映画を希望しました。

 大島さんの意見も聞きたかったので、前置きなしに尋ねたら、同じ作品を挙げてくださったんです。嬉しかったですね。

 あと、『ノーカントリー』も気に入っています。

2024.09.03(火)
文=ゆきどっぐ