だから学生服を着る役は絶対にしないでおこうと決めていました。制服を着ると、子役からやってきた方には経験値でかなわないし、20代は群雄割拠だから埋もれてしまう。制服が着られなくなった瞬間に、キャリアが終わってしまうような気がしたんです。

 

――そして2017年に代表作『彼女の人生は間違いじゃない』と出会います。

瀧内 『日本で一番悪い奴ら』の助監督だった方がテレビドラマを撮ったとき、私を呼んでくださったんです。そうしたらその現場の監督のひとりが、今度『彼女の人生は間違いじゃない』の助監督をするということで、オーディションに声をかけてくださって。

 でもオーディションというより、面談みたいな感じでした。私は廣木隆一監督に根掘り葉掘り聞かれて、どんどん暗い気持ちになり、泣きだしてしまった。終わって外に出た瞬間、やっと息が吸えると思うと嬉しくなって、スキップして帰りました(笑)。そのスキップする姿をマンションの屋上から見て、廣木さんは私にしようと思ったそうです。

「しんどかったしか出てこない」思い出すだけで涙が…

――福島の仮設住宅から、渋谷のデリヘルにアルバイトに行く主人公を演じた瀧内さんの演技は、すべてを振り絞ったような素晴らしい演技でした。

瀧内 それが廣木組のあり方だと思うんですけど、カメラが回らない日もありますし、どんどん追い詰められていくんですね。撮影中に7キロくらい痩せてしまって、これではシーンが繋がらないよって。それくらい追い詰められた現場でした。

 いちばんしんどかったのは実際の仮設住宅でロケをして、お隣にも被災した方が住んでいるようななか、自分の取り繕った感じが拭えなかったことです。私たちは宿泊先から仮設住宅に行き、撮影をして、また宿泊先に帰る。それが自分には耐えられなかったです。

 仮設住宅のおばあちゃんが「嘘をつかずに生きてくださいね」と言ってくださったのが忘れられません。でも映画は作りものじゃないですか? 私たちが撮影をする一方で、仮設住宅には自死する方もいらっしゃいました。しんどかった……しんどかったしか出てこないです。思い出すだけで涙が出てきます。

2024.08.13(火)
文=門間雄介