しかし7年前にチューリッヒでも交通量の多い地区の年金生活者用アパートの4階に引っ越し、そのすぐ後に猫のジョイが亡くなってからは、もう猫を飼わないことに決めたそうです。「あの子たちがとても恋しいよ。仕事から帰ってくると、しっぽを振って出迎えてくれるのは最高の瞬間だったね」
ターナー博士の研究の結果はどれも「猫は私たち人間の気分を良くしてくれる」というもの。猫がそばにいるだけでネガティブな感情が軽減されるといいます。
過ごす時間が長いほうが、猫との関係は良くなります。だから毎日遊んだりなでてあげたりしましょう。その子が好きなこと、興味のあることをよく観察すれば、お互いにもっと楽しめるはず。もし家族の中で猫がなつかない人がいたら、その人に2週間エサをあげさせてみましょう。「人間でも時間をかけて丁寧に食事をつくってくれる人に対しては愛情が深まるものでしょう」とターナー博士は言います。
「エサをあげると、猫は相手と関わろうとします。女性がエサをやることが多いので、インタラクションの相手としてまず女性を選ぶのです」
しかし他の研究では、女性や子供だけでなく男性とも関わろうとすることがわかっています。研究では、色々な人に座って本を読んでもらい、猫が誰の元に行くかを観察しました。女性の場合は子供でも、猫に近づく時には同じ高さになるように床にしゃがむ傾向が見られましたが、男性はソファやアームチェアに座ったまま猫の相手をするか、自分の膝へと持ち上げました。
「猫はそれを嫌がる場合もあります。あとは子供――特に男の子は駆け寄ることがありますが、猫はそれが苦手です。アニマルセラピーの講義では必ず、『子供も走って近づいてはいけない、静かに座って本を読みながら待つように』と教えています。そうすれば猫のほうから近づいて来ますよ」
幸運をもたらす世界の猫
猫の魅力は、スピリチュアルな面でも多くの文化に見られます。すでに飼い猫がいた古代エジプトでは、猫は神聖で、幸福と幸運をもたらす存在。家族が死んだら一緒にお墓に入ったのです。
2024.07.12(金)
文=カリーナ・ヌンシュテッド,ウルリカ・ノールベリ,久山 葉子