中東や東アジアでも敬意を集める存在でした。イスラム教では特別な地位を与えられ、清い動物として崇められています。猫のそばにいるのは信者の証。預言者ムハンマドにもムエザという名の白黒のアビシニアンがいました。ムハンマドは猫が必ず4本肢で着地するところが気に入っていたそうです。

 日本の招き猫は江戸時代に登場したと考えられ、各地に伝説があります。ここで2つ紹介しましょう。

 あるお金持ちが急に暴風雨に見舞われ、お寺の木の下に避難したところ、手招きしているように見える猫がいました。その猫を追ってお堂の中に入ると、さっきまで立っていた木を雷が直撃。命を救ってくれた猫に感謝して、男はお寺に寄付をしました。

 もう1つの伝説は残酷です。ある芸者がこよなく愛していた飼い猫が着物を嚙み始めたので、店の主人は邪悪なものに取り憑かれていると思いこみ、首を切り落としてしまいます。すると飛んでいった猫の頭が、芸者に襲いかかろうとしていた蛇の上に落ちました。芸者は命を救われたものの、最愛の猫を失って嘆き悲しみました。客の1人が彼女を慰めるために猫の像を建てさせたということです。

骨折を治し、痛みを和らげる…「猫のゴロゴロ」と鳴く行為に秘められた「驚きのパワー」〉へ続く

2024.07.12(金)
文=カリーナ・ヌンシュテッド,ウルリカ・ノールベリ,久山 葉子