ゴールデンのトーク番組やネタ番組、クイズ番組(これが一番楽しかった)、朝とお昼の帯の情報番組、BS、ローカル、インターネット番組、ドラマに本人役で出演したこともあった。ラジオも始まり、雑誌やらWEBメディアやら地元紙やらのインタビューもたくさん来たし、営業の数も爆発的に増えたし、広告代理店のコピーライターが書いたネタでCMもやった。

 スタンプラリーのようにあらゆる番組を一周するうちにネタをやりすぎておれも相方も飽きてしまい、少し違いを見せようと“お祝いキャラ”を“呪い”キャラに変えてやろうとしたら呼んでくれたプロデューサーに手で大きくばってんを作られ、怒られた。マネージャーにそのことを相談したらマネージャーにも怒られた。リズムネタで流行っているときは一周するまでネタを変えないのが鉄則、なぜなら制作サイドはあくまでそのネタをさせるためにおれたちを呼んでいるから。おれは芸人って面白いことさえすれば喜ばれるんだと思っていたが、面白いにも色々種類があって、どの種類の面白さを求められるかを見極める目が必要だと知った。なんだか狭っ苦しい話だなと思いながらも、乗っている波から飛び降りる勇気はなかった。

 だが、飛び降りるまでもなく、波は勝手に崩れた。リズムネタは数を作れないので飽きられる。いや、飽きられる前に“旬が過ぎた”と見なされる。リズムネタの賞味期限はレバ刺しくらい足が早い。“旬”“いま人気がある”“いま流行ってる”という理由だけで舞い込んでいた仕事は、びっくりするほどぱたりと消えた。

 それでもおれらは、ふつうのネタを真面目に磨いていけば、得た知名度を元手にまたTVに出れると思っていた。違った。リズムネタや特定のギャグで流行りきってしまうと、そういう芸人(・・・・・・)の枠に入れられる。世間からも、スタッフからも。あのリズムネタの人、あの一発屋の人、という認知が植え付けられると、露骨に舐められる。いくら他に面白い漫才やコントのネタがあっても、いくら大喜利が強くても、そんなところには目がいかない。もちろん、一発屋として消費されながらも食らいついて地位を確立している芸人はいくらでもいる。ただ、芸歴一年目で身の丈に合わない売れ方をしたおれたちには無理だった。

2024.07.07(日)