和田 ええっ、ビックリです。

田嶋 お母さんは戦後、16歳の頃からマッサージの仕事をずっとやってお金稼いで、その後、沼津市から賞をもらったんですよね?

和田 はい、ひとつの専門職を長く続けた人を表彰する「技能功労賞」を受けました。

田嶋 本の中ではお母さんのことには数行しか言及してないけど、輝く宝石みたいな人。それなのに、お父さんは自分の女房をバカにして評価しない。娘のあなたもお父さんの側について「飯がまずい」とか言っていた。

 

なぜ女は「父の娘」になってしまうのか

和田 そうなんです、今となっては後悔していますが、当時は父の側に立って、母を悪しく言ってました。

田嶋 そんな娘と夫を捨てて離婚して、ずっと1人で飯を食っていく。素敵じゃない。

和田 思い返すと、父はいわゆる「毒親」で、私の存在を否定してました。子供はあまり好きでなく、姉がいたので1人で十分だったらしく、「お前は生まれてこなくてよかった子供」と言われながら育ったんです。私は母には勝手なことをいっぱい、ひどいことも言ってきたけれど、逆に私のことを全く認めない父の気に入るような行動をしていたんだと思います。

 本来なら父の価値観に反旗を翻す「母の娘」になるべきだったのに、逆に父の価値観を内面化した「父の娘」になってしまった。今年9月に文春新書から刊行予定のご著書のゲラを読ませていただいて、先生が書かれていた「父の娘」という概念を知り、ハッとしました。私こそ「父の娘」だって。

田嶋 世間という男社会から認めて欲しいからこそ「父の娘」になってしまう、世間の女性の多くはそうだと思う。でないと、いじめられるし、生きにくかったから。父親は男社会の代弁者でしょ。日本は会社も議会も男社会だから。父親にまず気に入られないってことには女にとって落第なわけ。

和田 ああ、本当にそうですね。今とても腑に落ちています。

田嶋 多くの場合は、お母さんも「父の娘」で、男社会の手先みたいなものだから、娘を結婚に適した人間に、二級市民に育て上げようとする。それが「女らしく」なること。そうしないと妻としての役割が果たせない。うちの母はそれに必死になっていた。

2024.06.27(木)
文=和田靜香