手軽とは言い難い飲む中絶薬
アフターピルが妊娠の可能性がある性交の直後に服用するのに対し、経口中絶薬は妊娠が確定したあとに服用して中絶をするための薬。諸外国では30年以上前から使われており、妊娠22週まで服用できる国もあるが、日本では初めて承認された経口中絶薬ということもあり、現時点では、妊娠9週0日までの使用に限られている。
「『飲む中絶薬』と聞くと手軽な感じがしますが、妊娠を終わらせるための薬ですから、服用して、はい終わりというわけにはいきません。アフターピルと同時に語られることが多いせいか、経口中絶薬を薬局で購入できると勘違いしている人もいるようですが、経口中絶薬は母体保護法指定医がいて、かつ、入院の設備がある医療機関・診療所でないと扱うことができません」
経口中絶薬を取り扱っている医療機関は東京都でも11施設ほど(24年2月現在)。医師が処方した2種類の薬を36~48時間空けて服用する必要があるため、医療機関には2日に分けて足を運ぶ必要がある。
「1剤目で子宮と赤ちゃんの間を剥がし、36~48時間空けてから2剤目を飲んで子宮を収縮させ、赤ちゃんを体の外に出します。重たい生理痛ほどの痛みや経血量がありますし、排出が確認されるまで最長で24時間クリニックで待機しなければなりません。また、1割未満と言われていますが、24時間経っても中絶が確認できない場合は、従来の掻爬法や吸引法で処置することになります」
子宮に挿入した器具によってかき出す掻爬法や吸い取る吸引法では、子宮を傷つけるのではないかと不安を抱く人もいる。しかし、働く女性のライフスタイルを考えるのであれば、これらの方法のほうが現実的とも言える。
「経口中絶薬は、通常1~3日の休みが必要です。一方、掻爬法や吸引法は麻酔などのリスクはあるけれど、手術は10~30分程度で半日あれば終わります。いずれの場合も人工中絶は保険適用外で、費用は10~15万円ほど。どんな方法にもメリットとデメリットがあるので、他人の意見に惑わされることなく、納得できる方法を自らの意思で選択することが何よりも大切です」
●経口中絶薬の流れ
2024.06.01(土)
文=今富夕起
写真=深野未季、アフロ