子どもが多く、先進国の中では高い出生率を維持するフランス。そこで女性はどのように生き、子を産む選択をしているのか。渡仏して23年、その間にフランスで2人の子どもを出産したライター、髙崎順子さんに綴ってもらいました。


フランスで知った「どちらでもいい」人生

 25歳でフランスに渡り、はや23年。その間に夫と出会い、2人の子に恵まれました。異国での子育てはやはり大変なものの、その大変さに理解のある社会と制度に助けられ、今日まで来ています。とはいえ私は「この国がいいから」と、フランスでの出産と子育てを選んだわけではありません。かつては子を持つこと自体、積極的に考えてはいませんでした。

 私が願ってきたのは「書く仕事を続ける人生」。一方、昭和の日本で生まれ育ち、幼い頃から刷り込まれた「いつかは子を持ち、母になる」との固定観念もありました。同時に、母になることはキャリアの停滞に繋がるとも知っていた。だから今は向き合いたくない―それが20代から30代のころの、正直な思いでした。

 そんな私の感覚は、フランス暮らしで大きく変わっていきました。この地で出会った女性たちの生き方は、私の固定観念を覆すくらい多彩だったのです。

 女性は子の有無にかかわらず、仕事を続けキャリアを築く。未成年の子がいる女性の就業率は約8割で、子育てと仕事は両立すると数字が示しています。子がいてもいなくても、その生き方を他人が外側からジャッジすることもありません(全くないわけではないけれども)。そこで夫になる人と出会った時、私は自然に子を望めるようになっていました。仕事は自分にできる形で、最大限続けよう。きっと続けられると思いながら。

産むことも産まないことも選べる社会の仕組み

 多彩な人生がありうるフランス社会、それは女性たちの意思が強いから……とのイメージで語られがちですが、実際はそんな単純な話では済みません。誰にとっても、妊娠出産は人生を変える一大事。相手がいる以上、予想外の事態も起こり得ます。そこで自分の意思と生活を守るには、そうできる制度と支援が必要です。

 フランスでは、女性の性と生殖をめぐる医療はすべて、国の医療保険の範疇にあります。ピルなど医学的避妊は保険適用で25歳以下は無償、中絶医療は年齢を問わず、経口中絶薬の医療ケアか外科手術を自己負担なしで受けられます。

 望まない妊娠が出産に至った場合は、内密出産と養子縁組が公的支援として整備されています。そして出産に必要な医療費は、医療保険で原則、無償です。

2023.06.16(金)
Text=Junko Takasaki
Photographs=Shiro Muramatsu

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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