この記事の連載

 人を惹きつける“重力(GRAVITY)”に満ちた場所を俳優の影山優佳さんが巡る連載「NIPPON GRAVITY」。

 第3回の行き先は江戸の時代、天領地から集めたお米を貯蔵する御米蔵があったことから名付けられた蔵前。最近ではカフェや雑貨店など個性的な店が軒を連ね、注目を集めています。この蔵前で、廃棄予定の酒粕などを活用するなど、新しいジンを生み出す挑戦を続ける蒸留所があります。

 酒好きだけでなく、多くの本物を求める人を魅了する「東京リバーサイド蒸溜所」に伺いました。

後篇「東京リバーサイド蒸溜所」
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世界にはまだまだ眠っている素晴らしい素材がある

 「東京リバーサイド蒸溜所」は「循環経済を実現する蒸留プラットフォーム」を目指し、廃棄素材などを使用したクラフトジンの生産を行う「エシカル・スピリッツ株式会社」が2020年に開いた世界初の再生型蒸留所。

「実は私、以前知り合いからこちらのジンをいただいたことがあって。その時に華やかな香りが印象的だったのもそうなのですが、廃棄物などを素材にこんな素晴らしいジンが造られているというのにも驚いたことを覚えています」(影山さん)

 なぜ、通常の素材ではなく、廃棄素材を使用しているのか? その質問にエシカル・スピリッツ株式会社代表取締役CEOの小野 力さんはこともなげに答えてくれました。

「私たちの会社の大本には、世の中で“今は”認められていないものにも、まだまだ隠れた才能や魅力があるという理念があるんです。例えば日本酒を造る過程で出てくる酒粕。近年では、多くが廃棄処分されてしまう現実がありますが、その酒粕から造った酒粕焼酎を原料にすれば、ジンを造ることができるんじゃないか? そうした問いから始まり、試行錯誤の結果生まれたジン『LAST(ラスト)』は素晴らしいものに仕上がりました。この経験を元に、他にもまだ眠っている素材はたくさんあるのではないかと考え、その立脚点から生まれたのが、可能性を引き出す蒸留所、再生型蒸留所なんです」

2024.05.18(土)
文=CREA編集部
写真=佐藤 亘