この記事の連載

「ドラマは女性が好きなものを躊躇なく作れるジャンル」

――この連載でたまにしている質問なのですが、これまでのテレビ業界では、バラエティの著名なプロデューサーは男性が多く、ドラマは女性のプロデューサーが活躍するケースが多かったように思います。両方を経験された立場として、なぜそこに差異が生まれるのだと思いますか?

 ここからはあくまで私の考えですが、多分、日本のバラエティはまだまだ男性的な感性のほうがつくりやすいし、そのほうがウケるんだと思います。言い方がすごく難しいけど、それはおそらく笑いというものが多少の加虐性を含むからなんじゃないかと思っていて。バラエティにはまだ、いじるという笑いの取り方が残っていますよね。それは見る側としては女性も楽しめるんですよ。でも自分の手でつくるとなると一歩躊躇いを感じるんだと思います。

 最近も『家、ついて行ってイイですか?』の収録にお邪魔したときに、VTRを観ながら感じました。素人さんの家に行って、すごく変わっていて面白い方だったんですけど、「面白がっていいのかな」って気持ちが私の中に常にあって。それはその人の人生をいじっているわけで、自分がディレクターだったら「失礼なんじゃないか」と心配になっちゃうと思う。そこで失礼だとわかりながらもガンガン攻めてツッコんでいける感性は、やっぱり男性のほうが強いんじゃないでしょうか。

――非常に納得がいきます。

 一方で、ドラマは女性が好きなものをドーンとつくれるんです。もちろん男性向け・女性向けと区切るのが難しい作品もありますけど、ラブコメだったりBLだったり、あきらかに女性向けにつくられている作品は多い。だから女性のつくり手が活躍しやすいんじゃないでしょうか。そこで男性が「女性はこういうのが好きだから、こういう企画が当たるでしょ」みたいに雑な認識で何か言ってきても「それは違います」と言えるんですよね。ドラマの世界で、内容面に関して男性の意見がゴリゴリ通ることはあんまりないように感じます。

――そんな中にあって、今テレビのつくり手として注目している女性はいますか?

 俄然、うちの会社の本間(かなみ)ですね。本間はすごいですよ。いろいろなことに対してずっと怒ってるんです。「『折り合いをつける』って言葉、知ってる?」って聞きたくなるぐらい、あらゆることに折り合いをつける気がない。でもそれは本当にクリエイティブの原動力として重要だと思います。私自身はすぐ懐柔されちゃったり懐柔しようとしたりしてしまうんですけど、本間はずっと尖っていてずっと怒っていてとても不器用で、それが作品づくりに生きているんですよね。

――たしかに、この連載でインタビューした際に「負の感情がエネルギーになることが多い」とおっしゃっていました。それでいうなら、今の祖父江さんはどんな感情が原動力なんでしょう?

 かつては私も怒りが原動力だったけれど、今は共感だと思います。自分の中にあるものを表現したときに、「私もそうだ」と思ってくれる人を見つけたい。「こんなことで悩んでるんですけど、これって私だけじゃないよね?」というメッセージを込めているつもりですね。

 それで解決しなくていいんですよ。共有できればいい。さっき話したような、過去の自分の思いや経験から、今同じようなことに直面している若い誰かのために作品をつくりたいというのも同じことですね。やっぱり年齢やキャリアと共に考え方は変わっていくんだな、と実感しています。

祖父江里奈

岐阜県出身。2008年テレビ東京入社。ドラマプロデューサー。『来世ではちゃんとします』シリーズ、『生きるとか死ぬとか父親とか』など担当作多数。蟹とチョコレートが大好き。

テレビ東京開局 60周年特別企画ドラマスペシャル
『生きとし生けるもの』

妻夫木聡×渡辺謙! 余命宣告された患者とメスを握れなくなった医者が病院を抜け出してバイクで旅に。手には、ある薬。「人は何のために生きるのか」を模索するロードムービー!

2024年5月6日(月)放送
時間:20:00~21:54
作:北川悦吏子
監督:廣木隆一
音楽:大友良英
出演:妻夫木聡 渡辺謙 原田知世 杉野遥亮 満島ひかりほか
https://www.tv-tokyo.co.jp/ikitoshiikerumono/

次の話を読む「くりぃむさんと仕事ができないなら…」くりぃむ愛強火ディレクターが有田上田からかけられた一言

← この連載をはじめから読む

Column

テレビマンって呼ばないで

配信プラットフォームが活況を呈し、テレビの観られ方が大幅に変わりつつある今、番組のつくり方にもこれまでとは違う潮流が勃興しています。その変化の中で女性ディレクター/プロデューサーは、どのような矜持を持って自分が面白いと思うものを生み出しているのか。その仕事論やテレビ愛を聞く連載です。

2024.05.01(水)
文=斎藤 岬
撮影=平松市聖