といってくれた。いい夫である。
「よく撮れてるわけがないです。あの人はそういわないと、どうなるかがわかっているから、私の機嫌を取ろうとしただけですよ」
記念写真は室内できちんとライティングしてくれるので、顔の影はできないけれど、陰影が感じられない、のっぺりとした特殊な写り具合になる。それが写真館で撮影する、記念写真の王道といえなくもない。
「私の顔、ただでさえ凹凸がないのに、真っ平らに見えるんです。ヘアメイクもしてもらったのに、写真をみると明らかにしみ、皺、たるみの顔の変化がわかるんです。絶対に二割方、顔もたるんで太って見えるんです!」
カメラマンの腕がいいのか悪いのか、私にはわからない。ただ私より若い世代は、プロに写真を撮ってもらうとなると、まずファッション雑誌のグラビアを、思い浮かべてしまうのではないかと思う。
家族と一緒の喜ぶべき記念写真でも不満が爆発。被写体をどう写そうかと考えるよりも、とにかく写真を撮れば仕事が終わると、カメラマンがライティングを無視して撮影すると、目の下、頰の下に影ができて、子泣きじじいができあがる。更年期の女性はどうやって写真に写ればいいのだろうか。現実を見よという声もかすかに聞こえるが、それも含めて、
「何と難しいことよ」
と私はため息をついたのである。
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2024.03.17(日)
著者=群 ようこ