「子泣きじじいじゃないか」

 と自分の写真を見てびっくりさせられた。素人写真ならともかく、プロが撮影して「子泣きじじい」なのである。もしかしたらこんな顔になってしまったのではないかと、鏡で確認したほどだ。三十六年間で二回というのは少ないかもしれないが、たとえばお世辞であっても、同じ写真を十人に褒められたとする。しかし自分がそれを子泣きじじい写真と認識すれば、それは大ショックなのだ。十人の褒め言葉なんぞ、簡単にふっとんでいく。それでもまだ若い頃の子泣きじじいは、そのときはショックでも、後から見るとまだ肌に張りがあるので、かわいげが残っているけれど、中高年になってからの子泣きじじいは、どこからみても妖怪になるのが恐ろしい。

 

「私、老けてる!」家族の記念写真で受けた衝撃

 私の四十代後半の知人女性には、小学生の子供が二人いる。上の子供が生まれたときから、一年に一度、写真館で家族写真を撮影し続けている。幸せな家庭はこういうものだと、

「それは記念になっていいわね」

 といったら彼女が、

「それが最近、いやでたまらないんです」

 と顔をしかめた。夫は記念になると喜んでいるだけだし、子供たちは緊張しつつも、ふだんと違う自分たちの姿を楽しんでいるようだ。しかし問題は母の立場の彼女なのである。

「最初は初めての子供が生まれて、女の子だし記念写真を撮影するのがうれしくてたまらなかったんです。そのためにかわいい服も買ったりして。下の子が生まれると、男の子なのでそれなりにかわいくて。撮影のときも、どれだけ子供たちをよく撮ってもらえるか、そればかりを考えていたんです」

 それは母としての当然の気持ちであろうと私はうなずいた。

「でも、今は違うんです」

 子供たちが幼いときは、何をさておいても子供が優先になった。ところが四年前、出来上がった記念写真を見て愕然とした。それまでは何とも思わなかったのに、急に、

「私、老けてる!」

2024.03.17(日)
著者=群 ようこ