と認識したというのだ。子供の成長と共に、親が歳を取るのは当たり前だが、彼女は、
「歳を取ったんじゃなくて、明らかに老けていたんですっ」
といい放った。たしかに前に比べれば、ちょっと皺も増えたし、顔だってたるみ気味になった。それは五十代を目前にした世の中の人、ほとんどがそうなのだ。衝撃を受けた彼女は、よせばいいのにこれまでの記念写真を、ずらっと並べてみた。そこで二重にショックを受けた。
「自分が鏡を見たときに、老けたと感じるのと、記念写真で毎年、見せつけられるのとでは全然、違うんです。その残酷さといったらないんです」
生物は老いるものであるから、それは仕方がないのではと慰めても、
「絶対にいやだ」
と彼女はいう。自分が想像していたよりも、老ける度合いが早かったのが、我慢できないというのだ。
不満爆発の彼女が取った行動
そして彼女は思い切った。記念撮影のときに、子供を切り捨てたのである。それまでは、
「子供たち、かわいく写ってますか」
とカメラマンに何度も確認していたのに、衝撃を受けてからは、子供なんかどうでもよくなり、どうやったら自分が若く細く写るかだけを考えるようになった。なるべく細く見えるように、椅子に座った子供たちの脇で、体を正面に向けずに斜に構え、顔もむきだしにならないように横向きにしていると、
「お母様、もうちょっとお体とお顔をこちらに向けていただいて」
とカメラマンに指示される。しかしそれも頑としてつっぱねるので、撮影時にはカメラマンと攻防が繰り広げられる。
「でも記念写真って、みんなのありのままの姿を撮影するものでしょう」
私がそういうと、彼女の顔は暗くなり、
「そのありのままの姿っていうのが、いやなんです。もう記念写真なんてやめたいです。これ以上、自分が老ける姿を延々と晒し、おまけに末代まで残すのはいやです」
夫の反応
自分の気持ちを夫にぶつけると、
「そんなことないよ、よく撮れてるよ」
2024.03.17(日)
著者=群 ようこ