多くのファンに惜しまれながらも、2023年6月29日をもって解散したガールズグループ、BiSH。メンバーの一人であるモモコグミカンパニーは、「解散宣告」から東京ドームで行われたラストライブまでの3年半の日々を、リアルタイムで書き記していた。
ここでは、その赤裸々な記録を一冊にまとめたドキュメンタリーエッセイ『解散ノート』より一部を抜粋。2019年11月22日、所属事務所社長から「解散宣告」を受けた瞬間、BiSHのメンバーは、モモコグミカンパニーは、何を思ったのか――。(全3回の1回目/続きを読む)
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「東京ドームで解散です」
2019年11月22日
雨がしとしと降っている。冬の始まりを存分に味わわせてくれるような、寒い、寒い日。
私は事務所のビルの前にいる。今日は、何も知らされずに、BiSHメンバー全員が事務所に集められたのだ。何を言われるんだろう。見当もつかずにビクビクしながら4階の一室に入った。大きなテーブルが一つ。その周りに並べられた椅子たち。部屋にはすでに、私たちの事務所WACK代表の渡辺淳之介さん、avexチームの人たち、マネージャーが揃っていた。アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・D、そして私、モモコグミカンパニー。BiSHの6人もそれに加わり、一つのテーブルを囲んだ。
渡辺さんが言った。
「東京ドームで解散。今は右肩上がりで人気のあるBiSHだけど、こんな状況もいつまで続くか分からないでしょ。だらだらと続けるよりも、BiSHは2、3年後に解散か、活動休止の発表をするのがいいんじゃないかと思う。みんなはどう思う?」
「解散」という言葉に、一瞬頭が真っ白になった。真っ白になったあと、こう思った。
「よかった」と。
そしてそのあと、心臓がバクバクと音を立てて鳴った。夢じゃないかと思って頬をつねりたくなった。でも、つねるのはやめた。周りを見渡しても、頬をつねっているメンバーは誰一人いなかった。メンバーの顔が見たくなった。私の席から見えるチッチは泣いていた。アユニの目も潤んでいた。ハシヤスメとリンリンはそれほど動じていないように見えた。隣にいるアイナの顔はなんだか覗き込めなかった。そして、恐らく誰も青天の霹靂のようには驚いていなかった。誰も「解散なんてしたくない」とは言わなかった。誰も反論しなかった。
2024.02.26(月)
著者=モモコグミカンパニー