『BKBショートショート小説集 電話をしてるふり』(文春文庫)を上梓した、お笑い芸人の「BKB」ことバイク川崎バイクさん。“楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバーであるモモコグミカンパニーさんとは、プライベートでも親交のある間柄。
ここでは『電話をしてるふり』の巻末対談を一部抜粋して紹介。「ジャンルが違う二人が、偶然友達になって小説書いたから仲良くなれた」というおふたりに、「小説の書き方」について語り合っていただきました。
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バイク川崎バイク(以下BKB) コロナ前に知り合って、ご飯を食べたり、お互いのライブに行ったりしたことはあったけど、仕事として会うのは今回が初めてよね。お互いに『電話をしてるふり』や長編小説の『御伽の国のみくる』などを書いてなかったら、モモちゃんとも知り合いぐらいで終わってたと思いますけど、やっぱりちょっとお互い特別な感じはあるのよね。
モモコグミカンパニー(以下モモコ) 単独ライブに行っても『電話をしてるふり』を読んでも思うんですけど、BKBさんがどういう思考回路で日々過ごしてるのかな、って気になってたんです。例えば私に対しても「アイドル」と一括りにしないで、ちゃんとその人を、人間として見ているという感じがします。人間観察がすごい繊細なんだろうなって。コントやショートショートを書くにあたって、それはどう生かされてますか?
「自分は普通の男なので…」
BKB 自分は平々凡々に過ごしてきた普通の男なので、トラウマを抱えているとか、両親が喧嘩ばっかりだとか貧乏だったとか、芸能界によくある“ハングリーエピソード”が一切ない。ないってことは、他のものを見るしかない。もちろん、自分にあるメンヘラ部分とか女々しさとかも生かされているんだろうけど(笑)。
モモコ 確かに、女性視点も多いし、メンヘラでないと作れないコントが多いかも(笑)。
BKB 人間観察をしようと思ってしているのではなくて、無意識に、人の言い方とか言葉のトーンとかを感じて考えることはあるかも。人に話しかけた時「ちゃんと話聞いてへんな」とか分かっても「まぁいっか」って思うんすよ。別に今、忙しいんやろうなとか、他に考え事あるんやろうなとか。逆もあって「あの後輩、せっかく俺に喫煙所でしゃべりかけてくれたやろに、俺、次のネタのことを考えてるからって適当に返したな」とか家に帰ってからちょっと凹むの。自分がされたくないことを人にもしたくないのは、みんなあると思うけど。
2023.04.23(日)
文=「文春文庫」編集部