「肉そばは特に食べ歩いてすごく研究して、独自の製法を作っていきました」と島ちゃんはいう。つゆについても「初め、出汁はあまり凝らないでやろうと思ったのですが、すごいこだわっちゃってます」と苦笑する。

 これは相当うまい一杯だ。他店と被らないこの路線の味を出してきたバランス感覚がすごく良いと思う。

西武池袋線「肉そば」の系譜

 西武池袋線沿線にはなぜか「肉そば」がうまい立ち食いそば店が多い。諸氏もご存知と思うが、椎名町「南天」は、立ち食い「肉そば」のパイオニア的存在である。平成10年の創業以来、椎名町のランドマークとなっている。この味を超えようと模索して独自の味を提供する店が誕生してきた。江古田の「のじろう」もその1つだ。一応、3店舗の「肉そば」の味を下表にまとめてみた。

「南天」のつゆは独創的だ。玉ねぎ、豚のバラ肉やロースなどのいろいろな部位を使用して出汁をとり、最後に鰹節などの出汁を加え、薄口醤油の返しを合わせる。そばは自家製の太麺を使用。

「のじろう」のつゆは鯖節、宗田節などから出汁をとり、自家製の返しを併せて作っている。肉は豚バラ肉を出汁や返しと一緒に炊いている。そばは製麺所にレシピを指定して作った太麺を使用。

 そして「麺処盛盛」は鰹節、宗田節、鯖節、鰺、うるめ、昆布、椎茸など多種類を使って出汁をとっていく。そばは大手製麺所の太麺を使用。「出汁がうまくとれると、お客さんが飲むつゆの量が増えるのですごく楽しいし、頑張ろうと思う」と島ちゃんはいう。島ちゃんはナイスガイだ。 

 こう見ると三者三様だ。「麺処盛盛」が登場したことで、西武池袋線沿線でどうも「肉そばブーム」が巻き起こりそうな気配である。

 

つゆに驚きの手法が…

 そして「麺処盛盛」の独特のうまいつゆには驚きの手法が使われていたのだ。島ちゃんが作っている時、私は見逃さなかった。それは「ラーメンのように返しと出汁を別々にしてつゆを作っている」ということである。これには驚いた。

2024.02.09(金)
文=坂崎仁紀