人も地球もwin-winに。これからは“発酵”的サステナブルの時代
近年、環境負荷に加担しないなど、罪悪感を抱かずに楽しめる食事=ギルティフリーが注目されています。しかし、パタゴニアプロビジョンズの日本酒を通した取り組みは、そのさらに先をいっていると小倉さんは言います。
「日本でサステナビリティの鍵を握っているものは、農業やそのコミュニティ。それはつまり“発酵”なんです。パタゴニアプロビジョンズが日本酒を最初の商品に選んだことは、人と自然との永続的なかかわりを大切にしていることの現れだと感じます。なぜなら、日本の酒蔵は、田んぼや森のパトロンだから。酒を醸し続ける間は、農業としての営みを通じて環境保全がされますし、日本酒を販売して出た利益は地域に還元されていく。そうしてコミュニティが保たれていく」(小倉さん)
酒蔵が地域の核となることで、生態的だけでなく社会経済的にも、その土地の営みが持続可能なものになるのだ。
「発酵食品であるこのプロダクトをみんなが消費すればするほど、土の中の窒素固定が進んで土が豊かになる。地球環境をよくするために何かを我慢するということも選択肢としてはあるけど、この事業はそうじゃない。人も地球も微生物もwin-winなプロジェクトなんです。“発酵”的なサステナブルのあり方がこれからは大事になってくると思います」(近藤さん)
パタゴニアの創設者であるイヴォン・シュイナードが常々口にする言葉にこんなものがある。「自然と人は別々の存在ではなく、人はあくまで環境の一部である。だから自然を守るなんてことは当たり前のこと」。
「僕たちの体のほとんどは微生物で成り立っているわけで、生態系のほんの一粒にすぎないんですよね。ただ普通に生活していると、その意識は埋もれてしまいがち。発酵は、自分と自然が一体化している感覚を思い起こさせてくれるものなんじゃないかな。自然に根ざした美味しい酒を味わうことで、豊かな水や大地、それを営む人や販売している店まで、ぜんぶ繋がっているという感覚を感じてもらえると嬉しいですね」(東さん)
「たとえば“日本酒バーベキュー”みたいな形で、ぜひアウトドアシーンでも自然酒を楽しんでみてください。寒い夜には、火を囲みながら燗酒を呑むのもいい。自然のなかの特別な時間に友人と一緒に呑むと、また違う楽しみ方ができると思います」(近藤さん)
2024.02.03(土)
文=平野美紀子
写真=鈴木七絵