この記事の連載

荻野晶さん[honto電子書籍ストア コミック担当]

Q1:夜ふかしマンガ大賞に推薦する作品は?

●『いやはや熱海くん』田沼朝/KADOKAWA

 毎日のように女子に告白される高校生の熱海くんは学年一の美形。だけど好きになるのは男の人というモテる男子の悩める恋物語。「CREA夜ふかしマンガ大賞2023」第一位に輝いた作品。

「読んだときに、早くも2023ベストマンガに出合ってしまったかも……! と感じました。絶妙なキャラの主人公・熱海くんから冒頭数ページで繰り出される『まったく僕の顔が良いばっかりに……』のセリフで、すでに落とされました。ゆるゆると淡々と描かれる熱海くんの日常、その独特の感性や表現、脇を固める秀逸キャラクターたち……。テンポのよい会話に引き込まれ、心地よい空気感にいつまでも浸っていたくなります。今年、友人や仕事仲間におすすめしている作品No.1かもしれません。みんなでそのよさを共有したくなる、語りたくなる魔力のある作品です」

●『日本三國』松木いっか/小学館

「これはすごい作品が出てきてしまった! と1巻から衝撃でした。いま最も熱くて勢いのある作品だと思います。迫力ある作画、テンポのよさ、練られた構成、魅力的なキャラクター、圧倒的熱量……。物語の世界に引きずり込まれること間違いなし。早く続きを読みたい……と、待ち望んでいます」

●『クジマ歌えば家ほろろ』紺野アキラ/小学館

「表紙を見て、内容がまったく想像できていなかったのですが、読んでみたらめちゃくちゃハマってしまいました。クジマって鳥? え? 鳥って普通に喋るっけ? え? という戸惑いはスルーして物語は進んでいきます。シュールなところとほっこりするところのバランスがよく、飽きずに読めて、ついニヤニヤしてしまいます。1巻が終わるころにはクジマのファンになること間違いなしです!」

Q2:人生で影響を受けたマンガは?

●『HUNTER×HUNTER』冨樫義博/集英社

 生き別れた父を探しに旅に出る少年ゴン。ハンター試験に挑戦し、個性的な仲間たちとともに、世界各地で強敵と競いながら少しずつ父の背中に近づいていく。

「マンガにのめり込むきっかけになった作品で、自分のなかでの不動の1位。出合わなければここまでマンガ好きにはなっていなかっただろうし、人生の大半をともに過ごして、何度も読み直しては笑い、泣き、いつまでも続刊を待ち望んでいる作品です。マンガが好きにならなければこの仕事もしていないので、仕事においても大きな影響を受けています」

Q3:夜ふかしマンガの楽しみ方は?

「ほぼ毎日お気に入りのソファの上でお茶を飲みながら。ときには布団のなかで寝落ちするまで」

Q4:いま、特に注目している作品は?

●『セシルの女王』こざき亜衣/小学館

「エリザベス1世と、彼女を生涯支えた忠臣ウィリアム・セシルの絆を描く本格歴史ロマン。歴史物ですが非常に読みやすく、それなのに読み応え抜群でぐいぐい引き込まれます。しっかりと描き込まれた服装や調度品なども素晴らしく、人物に対する描写を丁寧で、ドキドキしながら続きを待ち望んでいます」

Q5:とにかく泣きたい夜におすすめの作品は?

●『BLUE GIANT』石塚真一/小学館

「仙台で練習に明け暮れる日々、上京して仲間と共に成長していく姿、まるで音が聴こえてくるような描写……どこまでも真っすぐで熱い! 読んでいると自然と涙が溢れます……。何度涙させられたかわかりません」

●『メダリスト』つるまいかだ/講談社

「フィギュアスケートで世界を目指すコーチ・司と少女・いのりの物語。キャラクターたちの葛藤や技術面の成長もしっかり描かれるので、みんな応援したくなります。言葉も行動もどんどん成長して、常に挑んでいくいのりちゃんの姿に感涙。司との絆ももう……!」

Q6:期待の新人作家とその作品は?

●『君と宇宙を歩くために』泥ノ田犬彦/講談社

「激しい物語ではないけれど、凄まじい衝撃を受けました。言葉で表すのが難しいほど胸の奥がギュッとなって、ボロボロ泣きました。人物に対する描写が丁寧で、どうやったらこんな風に物語を生み出せるのだろう……と。たくさんの人に読んでほしい作品です」

Q7:深夜、ひとりでコッソリ読みたい作品は?

●『猥談バーで逢いましょう』原案:佐伯ポインティ、作画:地球のお魚ぽんちゃん/新潮社

「夜な夜な紳士淑女が集う実在する会員制バー『猥談バー』で、実際に語られた猥談の数々が収録されている本作。猥談しかないのにいやらしさがないというか……猥談ってこんなに楽しいものだったのね! と笑ってしまいます。語らう人々が尊重しあう様子にもほっこり。仲良くなった人にはこっそりおすすめしたい作品です」

●『絶対BLになる世界 VS 絶対BLになりたくない男』紺吉/新潮社

「BLマンガの世界の住人だと気づいてしまった主人公が、周囲でBがLするのを傍観しつつ、巧みにフラグをかわし、“BLあるある”にツッコミを入れていくさまがとにかく笑えます。こっそり楽しみたいというより、笑いすぎてしまうのでひとりで読むように心がけている作品です」

荻野 晶(おぎの・あき)さん
honto電子書籍ストア コミック担当

話題作からBLまでマンガ全般をこよなく愛し、月に100冊以上読む雑食派。マンガのキャラクターを讃えるアワード「マガデミー賞」の審査員も務める。

2024.01.21(日)
文=大嶋律子(Giraffe)