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活字が出来ていく音で、仕事を感じます

 佐々木活字店の2階へ上がるとそこには活字を鋳造する機械がズラリ。その光景に影山さんも思わず声が出ます。活字を作る機械は新しいものでも60年以上前のものであり、今では直せる職人も簡単にはみつかりません。こちらでは、6台ほど稼働させており、その他の機械は何かあった時のための部品交換用に残しているそうです。

「活字の原料は鉛合金。鉛とアンチモンとスズの合金で、熱で溶かして母型といわれる型に流し込み、冷却水で瞬時に冷やして完成させます。同じ文字でもサイズごとにそれぞれ用意しなくてはいけないし、本を作るとかになると膨大な量の活字が必要になる。あらかじめ活字のキープが無いとダメなんですよ」(佐々木さん)

「凄いスピードで活字が出来上がっていくんですね。ドロドロに熱された合金が瞬く間に活字へと鋳造されていく。型にはめられて出来上がる時のガシャン、ガシャンという規則的に奏でられる音がなんだか心地いいです。これが仕事の音なんですね。現代の私たちの日常って音がどんどん無くなっていっているように感じていて、久しぶりにこういう音を聞いて、なんだか癒されます」(影山さん)

2024.01.19(金)
文=CREA編集部
写真=佐藤 亘
ヘアメイク=佐藤友梨(エムズアップ)
スタイリスト=加藤なお(ALCATROCK)