CREA Traveller 2022 vol.2の特集は、「京都と沖縄 二つの美意識を訪ねて」。

 ともに長い歴史に支えられた伝統が息づく街でありながら、全く違う表情を持つ京都と沖縄。それぞれ違う魅力を持ちながら私たちを惹きつける、そんな二つの魅惑の街に通底する美意識を探りました。

この記事の掲載号

CREA Traveller 2022 vol.2

Beautiful Kyoto & Okinawa
京都と沖縄
二つの美意識を訪ねて

定価1,350円 (税込)

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 仏具で用いられる錺(かざり)金具をマネークリップに、西陣織の金糸をアクセサリーにと、伝統工芸の変化が面白い。

 技を芸術品として観るのではなく、身につけ、暮らしに溶け込ませることで、技術が繋がっていく。

 京都で今注目を集める作家4名をご紹介。


自分色に育てる喜びも魅力、令和の時代の「飾り」とは

◆錺之 -KAZARINO-

 錺之は、昭和42年創業「錺金具竹内」の2代目、竹内直希さんが家業の未来を見据えて立ち上げた新進ブランド。

 錺金具とは、装飾するための金具のことで、工場では、職人が銅板にタガネを当て、金槌でたたく音がリズミカルに響く。

 本来は建物の補強や保護を目的にしていた金具が進化し、細部に装飾を施す日本特有の工芸品になったといわれている。その歴史は古く、世界最古の木造建築物・法隆寺金堂にも用いられている。

 ところが、近年はライフスタイルの変化で仏壇を新調する家も激減し、最盛期には8人いたという手仕事の錺職人が、今では3人になってしまった。

 「これからの職人を育てるには、新しい仕事が必要。次の時代に、僕たちは何を錺るのかということを考える時にきている」と、竹内さんはいう。

 現代の生活に溶け込む商品に錺の技術を掛け合わせる試作の日々から、いくつか錺之ブランドの商品が誕生した。なかでも、いちばん手応えのあるのがマネークリップ。

 日本では財布ユーザーが多いため、なじみの薄いアイテムかと思いきや、スマホ決済、電子マネーの時代の波が背中を押してくれた。鎚目、さざ波、七宝、青海波、唐草。伝統的な和の紋様はシンプルにして美しく、その晴れやかさはギフトにも最適だ。

 そして最大の楽しみは、色艶を育てながら長く使えること。「父や職人さんたちが半世紀続けてきたものを守りたい」という竹内さんとともに、錺之はきっと、次の50年先に続いていく。

錺之 -KAZARINO-

https://www.kazarino.com/
※ホームページのオンラインショップで販売。

Text=Maki Takahashi、Mako Yamato
Photographs=Atsushi Hashimoto