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「不幸そうな人がいない」マイクロソフト

──語学の勉強と似ていますね。

 そうかもしれませんね。先日読んだ本に面白いことが書いてありました。マイアミからロサンゼルスに向かう飛行機のヘッドが1度ずれると、行き先がサンディエゴに変わってしまうのだそうです。

 飛行機の角度1度なんて、肉眼では違いすらわかりませんが、行き先がそれだけ変わってしまうように、結果に大きな違いが出るんですよね。

 語学学習も、エンジニアの「勉強」もきっとこれと同じで、やっているときは効果が感じられなくて「こんなことして何になるんだろう」と気持ちが萎えるかもしれませんが、積み重ねていくことで確実に力になるのだと思います。

──牛尾さんは筋トレも続けていらっしゃいますよね。

 はい。筋トレは語学やエンジニアの勉強より、よっぽど効果がわかりやすいのでおすすめです。僕は毎朝必ず30分、ランニングとウォーキングをするようにしていますが、最初に1週間続けたら「気力のなさ」が解消されて、3カ月後には体力がついて、休日にだらだら寝込まなくなりました。

 リモートワークをしていると体力が落ちやすいので、メンタル面にも影響が出ます。毎日30分の身体への投資は、必ず行うことをおすすめしたいです。

──「世界一流」の思考法を身につけて、牛尾さんが一番よかったと感じているのはどのようなことですか?

 自分の「できない感」が払拭できたことです。日本にいた頃は、念願のソフトウェア業界に就職できても、同僚たちに比べて自分はずっと頭が悪いと思っていたし、仕事をコントロールできているという手応えもありませんでした。

 でもアメリカで、どんな人にとっても初めてのことは難しく、理解には時間がかかるという事実に気づいたことで、何かわからないことがあっても時間をかければできるという自信と、「自分ならできる」という安心感が生まれました。

 結局、シンプルな日々の積み重ねが一番強く、そしてそれを「やる」と決めるのは自分でしかありません。マイクロソフトにいて感じる日本との一番の違いは、「不幸そうな人がいない」ことです。もし仕事が面白くない、会社が合わないと感じているなら、どうすれば自分が幸せになれるかを考えて、仕事の仕方や会社を自分で「選択」すると、自分の人生がよりよいものになると思います。

『世界一流エンジニアの思考法』

定価 1,760円(税込)
文藝春秋
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2024.01.29(月)
文=相澤洋美
撮影=三宅史郎