幸四郎 今回、叔父と同じ撮影所で仕事をさせていただき、スタッフも含めて「鬼平犯科帳」に何十年も関わってきた方がいたり、叔父が使っていた衣裳、小道具も大切に保存されていて、実際に使わせていただきました。
――ドラマにおける芸の伝承があったわけですね。
幸四郎 新しい鬼平を誕生させることが今回の使命だとは思いますが、そうした積み重ねがあるからこそ、現代で鬼平が出来るわけです。ただし、叔父が演じていた時も、「いずれはやってみたい」というようなことは思わなかったです。もっとシンプルに「わっ、カッコいい。面白い」と感じていただけで(笑)。私は染五郎時代に「引き込み女」と「盗賊婚礼」というスペシャル2作に出演させていただきましたが、撮影所で叔父のところへ楽屋挨拶に行った時も、「あ、生鬼平がいる」という目で見てしまいましたから(笑)。
――完全にファン目線ですね。今回、鬼平を演じるにあたっては、おじいさま、叔父さまとの差異というか、「自分の鬼平」をどのように造形していこうと考えられましたか。
幸四郎 祖父、叔父の鬼平をとにかく見ました。イメージが刷り込まれてしまうので、ある意味、自分をがんじがらめにするような作業ですが、そのうえで自分が長谷川平蔵という役をどう演じられるかを考えていました。本音をいえば、祖父、叔父の鬼平を真似したい。でも、そうすると芝居にはなりませんし、私がやる意味もなくなってしまう。やはり、池波正太郎先生の原作、大森寿美男さんの脚本、そして山下智彦監督の世界観をどれだけ体現できるか、それに徹したという感じです。
――新年に放送される「本所・桜屋敷」では、染五郎さん演じる銕三郎の立ち回りのシーンから物語が始まります。染五郎さんはどんなことを意識してお役に臨まれましたか。
染五郎 ドラマで描かれている銕三郎は僕と同世代の設定ですが、役づくりの上ではもう少し年上の25歳くらいのイメージで撮影に臨みました。はっきりと年齢に言及するところはないので、それくらいの設定の方が銕三郎らしさが出ると思ったので。
2023.12.29(金)
取材・構成=生島 淳