幸四郎 まさに二面性というか、鬼平の世界に接すると、「いろいろ変わっていくのが人間なんだ」と思ったりします。長谷川平蔵その人も、単純なヒーローとはまた違うキャラクターです。完全無欠ではない。なにせ、銕三郎時代は本当にやんちゃというか、ひどい(笑)。鬼平になってからも完璧ではなく、失敗があり、だからこそ人間らしいといえる。それが池波先生の作品の魅力だと思いますね。
――本当にいろいろなキャラクターが出てきますからね。愛すべき悪人。どこか抜けている同心。
幸四郎 そうそう。平蔵も決してひとりで解決しようとはしません。必ず傍に誰かがいる。そこで話し合ったり、昔のよしみで噂が耳に入ってきたり。そうした人間とのやり取りがあって、最終的に結末が見えてくる。まさに、それぞれの人間には過去があり、現在があるという人間ドラマ。それが「鬼平犯科帳」だと思います。
“鬼平”の継承
――幸四郎さんからの、おじいさま、叔父さまが長谷川平蔵を演じられ、そして今回、幸四郎さんと染五郎さんが出演することで、四世代にわたって高麗屋、播磨屋が「鬼平」という映像作品に関わることになったわけですが、これはひじょうに珍しいことだと思います。

幸四郎 歌舞伎では同じ役を代々演じていくことはよくあることですが――もちろん、これもたいへんなことです――ドラマでこうしたケースはあったんでしょうか?
――たぶん、ないと思います。
幸四郎 結果として4世代にわたって関わらせていただくというのは、「鬼平犯科帳」という作品がいつの時代にも受け入れられる普遍性を持っているということでしょう。昭和に祖父、平成に叔父、そして令和に入って私が出会った。ただただ幸せに思うだけです。
――吉右衛門さんの鬼平は1989年から2016年まで、連続ドラマとスペシャルを合わせ28年にも及ぶ人気シリーズとなりました。染五郎時代には出演もされていましたが、長谷川平蔵への憧れはありましたか。
2023.12.29(金)
取材・構成=生島 淳