オンタリオ湖も一役買っている新たなるワインカントリー

 そんなプリンスエドワード郡、実は、この15年で急成長を遂げている注目のワインカントリーです。

 新しいワインカントリーとして注目され、権威ある専門誌『ワインスペクテータ―』でも取り上げられているプリンスエドワード郡。けれど、自国消費がほとんどなので、残念ながら、日本ではあまり見かけません……。

このワインブームのはじまりは2001年の「ワウプース・エステーツ・ワイナリー」の開業から。

 もともとプリンスエドワード郡のテロワールは、冷涼な気候に適合するぶどうの品種を育てるのに、適していました。

 頁岩の欠片が混じった石灰岩の基盤に粘土質の土壌で、表層に石が多いこのエリア。多孔質の石灰岩は雪解け後の水はけがよく、また熱伝導率が高い石が多いため春には早くから土中が暖かくなるのだとか。ちなみに石灰岩はブルゴーニュなどの基本的な土壌と共通するそうです。

  冬はマイナス30度まで下がることもある厳しい気候のプリンスエドワード郡、オンタリオ湖の存在もぶどうに恩恵を与えています。冬は暖かな湖水が冷えきった気温を緩和し、夏は湖を渡る西風が気温を涼しく保つのだとか。

 こうした地質や気候など、この土地のテロワールを理解して、試行錯誤しながら、その個性をワインに表現する作り手が多いのも、プリンスエドワード郡の特徴のよう。

 そんなテロワールを大切にした、個性的なワイナリーが今や40軒近くを数えるまでに。

 ワインをめぐる動きがあったのとほぼ同時期に、オーガニックな農法の生産者や地産地消のレストランといったスローフードの潮流が芽生え、今、結実しつつある気運。これからが楽しみ!

2023.12.30(土)
文・撮影=古関千恵子