九州とほぼ同じ面積を誇り、豊かな自然と文化に彩られた北東北。それぞれ個性を放つ3県を舞台に、ときに列車の時間を楽しみながら、冬の絶景に歓喜し、美食と名湯を味わう旅へ。


【to AOMORI】
自然と歴史が育んだ多種多様な青森の「旬」

 極寒の中できらめく樹氷に、源泉かけ流しの秘湯──。冬の旅情を誘う魅力に満ちた青森県で、大自然に身を委ね、大地のエネルギーを体感しよう。

雪と氷が生み出す絶景と憧れの名湯を満喫

 世界有数の豪雪地帯として知られる青森県の中でも、毎年4メートル超の積雪量を記録する酸ヶ湯。そんな雪深い八甲田の山奥にありながらも、全国から訪れる人が後を絶たない秘湯が「酸ヶ湯温泉旅館」だ。名前の通り、酸性の温泉がこんこんと湧き、江戸時代から湯治場として愛されてきた。

 例年1月には、八甲田の厳冬が生み出す樹氷が見頃を迎え、まさに今がシーズン。まだ見ぬ景色を求めて、ロープウェーで山頂に降り立てば、地上では決して見られない幻想的な世界が広がり、一瞬にして心を奪われる。

 周囲には深い雪で閉ざされてしまう観光地も多いなか、ここ八甲田は、一年を通して絶景や温泉が楽しめるエリア。最寄りの新幹線停車駅である新青森駅からは、冬季も休まず路線バスが運行していて、意外なほどアクセスも良好だ。

 雪深い北東北では、県内の移動も鉄道が安心。ハンドルを握らない気楽さと、車窓から雪景色を眺める静かな時間が、旅をより豊かにしてくれる。

◆酸ヶ湯温泉旅館

ヒバ造りの千人風呂で東北の湯治文化を体感

 1684(貞享元)年に開湯し、古き良き湯治文化を今に伝える「酸ヶ湯温泉旅館」。人里離れた秘湯の宿は、旅館棟と長期滞在型の湯治棟から成り、版画家の棟方志功もここで湯治をしながら多くの作品を残した。

 混浴大浴場「ヒバ千人風呂」は、160畳もの広さを誇る湯屋に柱が一本もない荘厳な造りで、4つの湯船ではそれぞれに異なる源泉が堪能できる。

 朝と夜には女性専用の時間帯を設け、ほかに男女別の小浴場もあるので、自分に合ったスタイルで湯浴みに興じたい。

 夕食は青森の旬の食材を使ったお膳料理で、湯治棟では軽めの食事が毎日違う献立で供される。養生したい人におすすめ。

酸ヶ湯温泉旅館

所在地 青森県青森市荒川南荒川山国有林酸湯沢50
電話番号 017-738-6400
客室数 139
料金(1名) 13,200円~(1室2名利用、夕朝食付き)

●日帰り入浴
営業時間 混浴大浴場「ヒバ千人風呂」7時~18時 ※女性専用時間 8時~9時、男女別小浴場「玉の湯」9時~17時
定休日 無休
料金 1,000円
https://sukayu.jp/

●「地・温泉」はオンリーワンの湯ばかり

35宿の名湯・秘湯を厳選したJR東日本の「地・温泉」。湯はかけ流し、もしくはそれに準ずる、本物の温泉だけが名を連ねる。北東北からは「酸ヶ湯温泉旅館」を含む13宿が選定されている。「地・温泉」へは、往復の列車と宿を自由に組み合わせて予約できる「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」がお得。「地・温泉」プランの予約で「あっ!たま~る地・温泉」スタンプラリーにも参加可能。ご朱印風スタンプを集めると、「地・温泉」への宿泊やグッズなどがもらえる。
https://www.jreast.co.jp/the-onsen/

2024.01.21(日)
文=田辺千菊(Choki!)
写真=志水 隆、高田新太郎

CREA Traveller 2024 vol.1
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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