上白石 ヨシタケさんの描く笑顔もまた印象的です。本当におかしくてケラケラ笑ってる。人に見せる用の顔じゃないんですよね、みんな。
ヨシタケ そうそうそう。
上白石 絶対フィクションじゃないし、かといってドキュメンタリーでもない。そこにカメラがないから。その人が一生懸命、ただそこにいるというだけの絵。見る人の視線を感じないから、安心して自分の感情を託すことができる。
「みんな、生きてんだなあ」
ヨシタケ そうですね。会社にいる時は課長の顔、家に帰ったらお父さんの顔、実家に帰れば息子の顔をしなきゃいけないけど、その間、電車に乗ってる時だけは素の顔だったりする。誰でもない、何の役をしなくてもいい時の顔っていうのがみんなあって。そこを見たい。
上白石 そうですね。
ヨシタケ 電車とかで、「おっ、油断してるねえ」っていう。
上白石 すごい見ちゃう。「みんな疲れてんなあ」って。魅力的ですよね。すごく出る、その人が。
ヨシタケ そう。美しくはないかもしれないけど、愛しくなります。
上白石 はい。「みんな、生きてんだなあ」って。「誰かに会ったら、また笑うんだなあ」って。
ヨシタケ そうそう、ニコニコしていられる時間って限られていて。だからちょっと充電してる、温存してる時の顔、節約している時の顔って、いいですよね。
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ヨシタケシンスケさんと上白石萌音さんによる対談「正々堂々、弱音を吐こう」の16ページにわたる全文は、「文藝春秋」2024年1月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
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2023.12.21(木)
出典元=「文藝春秋」2024年1月号