それでも「まぁ、30万ぐらいならいいか」と構えてたら、妻は秘密裏にそのときの我が家の全財産100万を突っ込んでいてパーですよ。すげぇギャンブラーだなって尊敬しましたけど。このド貧乏状態でぜんぶ突っ込むかと。結局は「あんたの稼ぎがゼロ過ぎて私がこういう発想になってしまう」と僕のせいにされましたけど(笑)。

――出産直後の家計にとってかなり痛い出費ですね。

足立 そうですね。でも、その頃の僕は完全にヒモだったので。「ここで文句言わずに黙っておけば、後々なんかあっても勘弁してもらえるだろう」って打算が働いて、「しょうがないよ。人生こういうこともあるよ」って聞き分けのいいオヤジぶりました。

1週間分ずつ振り込まれる『ブギウギ』のギャラ

――ちなみに『ブギウギ』のギャラは、すべて書き終えてからの支払いになるのですか。

足立 1か月に一度、1週分ずつ振り込まれてきます。全額いっぺんにじゃないんだと。

――なんか、面白いですね。

足立 俺も、これはちょっと意外でした。

――執筆期間が長いので、ほかの仕事を受けにくい状況になるからでしょうか。

足立 朝ドラって、ほぼ2年やるので。もし終わってからギャラが振り込まれるようだった場合、終わるまで待ってたら大変なことになってしまいますよ、うちの場合は。

――1週分ずつの振り込みだとお金の心配はないですけど、それだと喜びが少ないような気も。

足立 どうなんだろう……なんとも言えないですね。最初のうちは「まとめてドカンとくれたほうが、一気に金持ちになった気がするのにな」みたいに思ったこともありましたけど、最後にまとめてもらっても、それまでの期間は何も入ってこないわけでね。

100円ショップのバイト経験で『百円の恋』を執筆

――事務所設立を発表したポストでは「30代40代と様々な職場でアルバイトしてその都度、そのタスクじゃ社員にはなれないなあと言われ続けました」とも書いています。『百円の恋』公開時もまだバイトを?

2023.12.16(土)
文=平田裕介