――9月に出た『春よ来い、マジで来い』は、脚本家になる前の最もくすぶっていた20代後半から30代にかけての体験をもとにした小説です。永島慎二の漫画『若者たち』の世界、さらに言うと誰も輩出しないトキワ荘を意識したと。

足立 そうです。ああいう集団生活ものが好きなので。集団生活ものって、映画で見ても面白いですけど、本とか漫画で読んでも面白いと感じていたので書きました。

――青春もので集団生活ものですけど、爽快感があるタイプの作品ではないですよね。

足立 爽快感はまったく狙ってないです。映画で話をすると、いわゆる後味のいい作品ってありますよね。爽快感があったり、大団円を迎えたり、っていう。そういう映画が嫌いなわけじゃないんですけど、個人的にちょっと置いてきぼり感を感じてしまうんですよ。

 主人公はすっごく人生うまくいく感じになっちゃったけど、「見てるこっちは、映画館を出たらまたひどい日常に戻るだけなんですが……」っていう。

――でも、今年の年末はいい感じになりそうな予感がしませんか。『ブギウギ』の脚本家として、紅白歌合戦の審査員に招かれたりするのでは?

足立 それはないと思います。というか、朝ドラの脚本家って紅白に呼ばれるもんなんですか? 朝ドラも見たことがなかったけど、実は紅白もちゃんとは見たことがないんですよ(笑)。こんなこと言ったらNHKから仕事もらえなくなるのかな? 今年から見ます。なので僕をどうか見捨てずに、どうかこれからも仕事ください(笑)。

写真=佐藤亘/文藝春秋 

春よ来い、マジで来い

定価 2,310円(税込)
キネマ旬報社
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2023.12.16(土)
文=平田裕介