「アハハ、逆ギレしてんじゃねーよ!」
「いや、ホントーーーにゴメン! 申し訳ない!」
「まあまあ、また改めて行こうよ」
「スタッフにもお詫びしといてー」
「了解ー」
「すいませんでしたーーー!」
今回も田中さんはずっとケラケラ笑うばかりで、まったく責めなかった。なんだろう、あの優しさ。祖父母か!
田中さんはなんでも許してくれる。田中さんがサッカーの審判なら、手使っても許してくれるだろう。
このエピソードを読む限り、私は寝坊の常習犯だと思われるかもしれない。冗談じゃない。私は目覚ましのアラームに気づかないことなどまったくない。前々著『経験』でニュージーランドで寝坊した話を書いたが、あれは目覚ましの時間設定を間違えたのであって、アラームに気づかなかったわけではない。アラームを知らず知らずのうちに止めて再び寝入ってしまったことなど、人生でこの二度だけだ。おそらく深層心理で、田中さんとのゴルフはブッちぎってもいい、と思っているに違いない。
先ほど田中さんのことを尊敬している、と書いたが、あれもウソかもしれない。尊敬している人とのゴルフを休むだろうか? あり得ない。2月14日にゴディバが休む、みたいなものである。しかも2回も。多分、田中さんのことをナメているんだと思う。でもこれは深層心理でのことで、自分ではコントロールできない領域だから致し方ない。
田中さんとの電話を切ると、(はぁー、またやっちゃったなー。でも今回も田中さんまったく怒ってなかったなー。っていうか、最後『また改めて行こうよ』って言ってたな? 2回もブッチされてまた行こうって気になるかね? 学習能力ないのかな?)などと考え、またすやすやと眠りに就いた。仏の顔は三度までらしいが、田中の顔は二十度くらいまでいけるんじゃないかしら? 今後も機を窺って試してみようっと。
ああ見えて実は一番優しい人
田中さんが優しい人であることは、あの雰囲気や言動からも、世間に認知されているのではないかと思うが、おそらくぴーちゃんのほうは、毒舌、はちゃめちゃなことをする、ギャーギャーうるさい、といった印象をお持ちの人が多いのではないだろうか? その印象通りである。
2023.12.12(火)
著者=上田晋也