当日朝6時に、田中さんが私の家のそばのわかりやすい場所までタクシーで来て、私がそこに車で迎えに行くという段取り。

 なぜなら田中さんは運転免許を持っていないから。田中さんだけじゃなく、ぴーちゃんも運転免許を持っていない。高校卒業時や大学生の長期休暇のタイミングで運転免許を取る人がほとんどだと思うが、あの二人はその当時なぜ取らなかったのだろうか? おそらく伊能忠敬ばりに歩くつもりだったのだろう。

 ちなみに以前、田中さんと私の家でF-1レースを観た時、田中さんは画面に食い入るようにして「よし、行け!」とか「おっ、ここで抜くかー?」と喚いていたが、普通自動車のアクセルもブレーキも、ましてやクラッチも踏んだことのないあの人に、F-1レースの魅力がわかるとは思えない。いや、免許持っていない人にF-1レースの魅力がわからない、という意味ではないよ。小学生でF-1好きの子とかもいるからね。ただ田中さんにわかるとは思えない。

 前日の夜、いつもゴルフに行く時のように着替えや道具など、ちゃんと準備をし、待ち合わせの40分前、5時20分に目覚ましをセット、いつもより早めに就寝して翌朝に備えた。

 次の日、気持ちよく目を覚ました。サイドテーブルにある目覚まし時計を見ると11時ちょっと過ぎ! なんのことだかわからない。目覚まし時計の電池が切れたのだと思い、携帯の電源を入れてみると、同じく11時ちょっと過ぎ。完全なる寝坊。知らず知らずのうちに目覚ましを止め、再び寝入ってしまったらしい。着信の履歴を見ると、田中さんから鬼のように電話が入っている。マズイ。速攻で田中さんに電話をした。

「田中さん、ゴメン! 目覚まし気づかなかった!」

「アハハ、今起きたー? 随分寝てたねー?」

「ほんっっっとうに申し訳ない! どうやってゴルフ場行った?」

「いや、いつまで経ってもカメちゃん(なぜか爆笑問題の二人と太田夫人は、私のことをカメと呼ぶ)が来ないし、電話もつながらないし、今のカメちゃんの家行ったことないから訪ねていってピンポンもできないからさ、スタッフに電話したらまだ高速乗ってなかったから、スタッフと合流して乗せてもらったよー」

2023.12.12(火)
著者=上田晋也